2009年2月18日水曜日

「クレイジー・ダイアモンド」 ピンク・フロイド


原題:「Shine On You Crazy Diamond」


■「Wish You Were Here
「炎 〜あなたがここにいてほしい〜」収録


輝け狂ったダイアモンド パートI
  
若かった頃を思い出すんだ
おまえは太陽のように輝いていた
輝け 狂ったダイアモンドよ
今おまえの瞳の中には
空に浮かぶブラックホールがあるみたいだ
輝け 狂ったダイアモンドよ
子供時代とスターの身分の板挟みにあい
鋼鉄でできたそよ風に乗って吹き飛ばされてしまった
さあ 遠くから嘲笑される標的となったおまえ
さあ よそ者となったおまえ
伝説となったおまえ 殉教者となったおまえ
さあ 輝くんだ!

  
おまえはあまりに早く秘密に手を伸ばした
おまえは月が欲しいと泣き叫んだ
輝け 狂ったダイアモンドよ
夜は多くの影におびえ
ライトにさらされ続けたお前
輝け 狂ったダイアモンドよ
そうさ おまえはきまぐれに几帳面で
自分自身に長居をして嫌がられ
鋼鉄でできたそよ風に乗って行ってしまった
さあ 快楽主義者 幻視者
さあ 画家
笛吹き 捕われし者
さあ 輝け!

  
輝け狂ったダイアモンド パートII
  
おまえはがどこにいるのか 誰も知らない
どれくらい近くにいるのか 遠くにいるのか
輝け 狂ったダイアモンドよ
もっとたくさんの層を積み上げるんだ
そうすればそこで 僕もおまえと一緒になれるだろう
輝け 狂ったダイアモンドよ
そうしたら 僕らは昨日の大勝利の影を気持ちよく浴びて
鋼鉄でできたそよ風に乗って船出するんだ
さあ 少年であり子供であるおまえ
勝利者にして敗北者
さあ 真実と妄想を掘り続ける鉱夫よ
輝け!

 

Shine On You Crazy Diamond part I
  
Remember when you were young,

you shone like the sun.
Shine on you crazy diamond.
Now there's a look in your eyes
like black holes in the sky.
Shine on you crazy diamond.
You were caught in the cross fire of childhood and stardom,
blown on the steel breeze.
Come on you target for faraway laughter
come on you stranger, you legend, you martyr,
and shine!


You reached for the secret too soon,
you cried for the moon.
Shine on you crazy diamond.
Threatened by shadows at night,
and exposed in the light.
Shine on you crazy diamond.
Well you wore out your welcome with random precision,
rode on the steel breeze.
Come on you raver, you seer of visions,
come on you painter, you piper, you prisoner,
and shine!

 
Shine On You Crazy Diamond part II

  
Nobody knows where you are, how near or how far.
Shine on you crazy diamond.
Pile on many more layers and I'll be joining you there.
Shine on you crazy diamond.
And we'll bask in the shadow of yesterday's triumph,
and sail on the steel breeze.
Come on you boy child, you winner and loser,
come on you miner for truth and delusion,
and shine!


【解説】

ピ ンク・フロイドのアルバム中、一番感情がストレートに現れているのがこの「Wish You Were Here」だろう。「The Dark Side of the Moon」(邦題:「狂気」)までは、サイケデリック色、実験色が強く、新しいことに挑戦するんだ新しい音楽を作るんだというような、強い意志と余裕が あったように思う。

それは「The Dark Side of the Moon」でもそうだ。心の底をのぞくような奇跡的な音を作り上げながら、本人たちは実に冷静にそれを見ている感じがする。また「Wish You Were Here」の次のアルバム「Animals」(邦題:「アニマルズ」)は、さらに批評家的な立場まで下がって、現代を描こうとしている。唯一この 「Wish You Were Here」だけが、その時の複雑な心情をストレートに吐露しているように思うのだ。

ピンク・フロイドはオリジナルメンバーであったシド・バレットをフロントマン(ボーカル&ギター)として1967年にデビューする。シド・バレット21歳の時だ。しかしシド・ バレットはロック・スターとして急激な成功を手にしながら、一年後にバンドを去る。ドラッグ(LSD)のやり過ぎとヒット後のプレッシャーで精神を病み、 奇行を繰り返し、ついには次作「神秘」の制作途中で、事実上解雇されてしまうのだ。

シドは元々は穏やかな、絵を描くことが好きな青年だったようだ。「画家(painter)」はそこから出てきた言葉かもしれない。無邪気で繊細で実質的に リーダーだったシド。しかしその彼を解雇しなければならなかったバンドメンバーには、そのことが一種のトラウマとして心の底に残っていたのかもしれない。

「The Dark Side of the Moon」の予想外の大成功で、彼らはシドと同じ立場におかれた。そしてシドを襲ったプレッシャーや自己と周りのイメージの乖離などの苦しみを、この時共有したのではないか。その思いが「Shine On You Crazy Diamond」や「Wish You Were Here」となり、そして状況に振り回される自分たちを皮肉った曲として「Welcome To The Machine」や「Have A Cigar」が生まれた。

さてここまではこのアルバム、あるいは「Shine On You Crazy Diamond」の背景である。それはメンバーの思いでありメンバーが陥っていた状況である。それだけでこの曲を「悲劇の天才を偲んで歌った曲」として片付けて良いのか。実際この曲がシドを歌ったものだとか、シドに捧げるといった文言は、アルバムのどこにも記されていない。それでもこの曲がリスナーを打ちのめす力を持っているのは、サウンド面の素晴らしさだけでなく、詞にも普遍的な力があるからではないか。

まず「Crazy Diamond」という表現。もちろんダイアモンドは美を素材としてもとから持っている(カットするにしても)わけだから、天才的な資質を持っていたシド を比喩しているのは同然だけれども、それを知らないでこの言葉を聞いたらどうだろう。魅惑的で妖しいイメージが広がらないだろうか。

diamondがcrazyとはどういうイメージなのか?素晴らしい資質を持ちながら、現実とうまく折り合いをつけられない「おまえ」を、ここでは「狂ったダイアモンド」 と呼びながら「輝け」と繰り返す。

それは哀れみではなく、呼びかけであり励ましであり、同じ状況の自分たち自身を支えるための精一杯の言 葉だったのではないか。そしてシドが陥った世界とは別の意味で、われわれも現実との折り合いの中で苦しみ、精神的な危機感を常に抱えているのではないか。 様々な相反する言葉は、そのまま精神が分裂しそうな世界に住んでいるわれわれ自身にも重なる。

つまりバンドのメンバーがシドの思いを共有したのと同じように、この詞の「おまえ」にリスナーは自分を見て、それでも「輝け」と繰り返される言葉に心がふるえてしまうのではないか。

パートIからパートIIに移ると詞の内容が変わる。「僕」も「おまえ」のところへ行くぞ、一緒に過去の栄光を味わいながら、船出をするぞと語りかける。リスナーは自分を思う。いつか自分を理解してくれる人の現れること。

アルバム「狂気」は外側から見た狂気だった。「炎」は実は、より内面に踏み込んだ、われわれ皆が抱え込んでいる狂気に触れたアルバムだったのではないかと思うのである。

5 件のコメント:

  1. 英語の歌詞の方のPART2が

    PARTⅠ になっているのは

    仕様なんでしょうか・

    しょーもないことですいません

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  2. ご指摘ありがとうございます!
    単純な入力ミスです。
    さっそく訂正させていただきました。

    またお気づきの点などありましたら、よろしくお願い致します。

    返信削除
  3. 非常に参考になりました。
    ありがとうございます

    返信削除
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    1. お役に立てたようでうれしいです!

      削除
  4. う~ん。うがったいい解釈ですね。自分は普段聴いているだけで満足するので、ここまで内容に入り込むことはないから、読んでいて面白かったです。ありがとうございます。
    私はフロイドのアルバムは個人的にこの『Wish You Were Here』が一番好きかもしれません。「Welcome To The Machine」のシニカルでインダストリアルなサウンド。「Have A Cigar」でのギルモアのハードなソロのかっこよさ。名曲「Wish You Were Here」など全体にバランスの良いアルバムです。それにこの頃からレコーディング技術の向上でしょうか。ヘビーでメタリックな音が流行ってきたように思います。

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