原題:STRIPS
■「ティルト(tilt)」収録
今はもう 頭はすでに あまりに非常識で 無気力な歌でいっぱいだ
それらは これまで芸術家たちによってささやかれた
無益な言葉の数々
不思議な魔術師や神々達の 色あせてしまった物語は
語りかける
中身のない偽善のために あなたを取り囲む詩人達から
今となってはさらにもう
誰も あなたを守ることができないと
La testa piena ormai
Di troppe assurdita'
Canzoni languide
E cose dette gia'
Artisti che
Sussuurrano
Parole inutili
Sbiadite storie di
Pianeti, maghi e dei
Narrati a chi non puo'
Difendersi ormai piu'
Tra poeti che
Ti cicondano
Di vuota falsita'
【解説】
イタリア屈指のジャズ・ロックバンドアルティ・エ・メスティエリ(Arti & Mestieri)の1974年のデビューアルバム「tilt」。“tilt”とは「傾き」のこと。傾いてますよね、ジャケット漏斗(じょうご)もタイトルの「tilt」の「t」も。
このアルバムはとにかくドラムスのフリオ・キリコの流れるように叩き続ける壮絶ドラミングに耳が行きがち。リズムやノリをキープしながら、ドラムス自体が歌うように叩かれるため、キーボード、バイオリン、サックスが入って来ても、ジャズ風なインタープレイの応酬というより、緊張感溢れる演奏と非常に叙情的な面が混ざりあった、独特な魅力溢れる音楽が繰り広げられる。
このファースト・アルバムではボーカルパートが非常に少ないのだが、この「STRIPS」でメロトロンをバックにヴァイオリンやサックスを絡めたタイトな演奏が続いた後、アコースティックギターをバックに優しい性質のボーカルが入る。とても美しい瞬間だ。そして以前からこの美しいボーカルがどんな内容を歌っているのか気になっていたのだ。
そこでインターネットのイタリア→英語翻訳に原詞をかけてまず英語にし、意味の通らないところなどを、もう一度伊日辞書で調べるという、恐ろしく手間のかかる作業の末、日本語にしてみたものだ。違っていたらもうごめんなさい。
内容的には、1970年代前半に見られた新しいロック・ミュージックの台頭を背景に、それまでの音楽を否定し、さらにさかのぼった昔の神話や伝説の力も失せ、人々は中身のない芸術に惑わされていると言っているように思われる。
現実批判である。しかし逆に言えば、そこに新しい芸術の力をオレたちが見せてやるぜといった宣言とも取れる。自らをArti & Mestieri(芸術家と職人たち)と名付けるくらいだから。
ボーカルパートは穏やかに歌われる。強烈に現状批判するというより、現実を哀れみ悲しんでいるかのようだ。しかしこれがアルティ・エ・メスティエリの、言葉による最初のメーセージなのである。
バックで流れるメロトロンが美しい。
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