2009年2月25日水曜日

「すべては風の中に」カンサス

 原題「Dust In The Wind」
■「暗黒への曵航
(Point Of Know Return)収録







 目を閉じる
 ほんの一瞬だけ でもその一瞬は過ぎ去ってしまう
 わたしのすべての夢は
 目の前で好奇心の前を通り過ぎてしまう
 風の中の埃
 すべて風の中の埃だ

 いつもの古い歌
 無限に広がる海のほんのひとしずくの水にすぎない
 わたしたちがしていることはすべて
 見たくないと拒んでも こなごなに大地に崩れ去る
 風の中の埃
 わたしたちは皆風の中の埃なのだ あぁ
 
 さぁ、がんばるのはやめだ
 大地と空以外には 永遠に残るものなどないのだから
 時はいつか過ぎ去ってしまう
 お金をすべてつぎ込んでも 時間をもう一分買い足すことはできない
 風の中の埃
 わたしたちは皆風の中の
 風の中の埃 
 すべては風の中の埃だ
 風の中の

 I close my eyes
 Only for a moment and the moment's gone
 All my dreams
 Pass before my eyes a curiosity
 Dust in the wind
 All they are is dust in the wind
 
 Same old song
 Just a drop of water in an endless sea
 All we do
 Crumbles to the ground, though we refuse to see
 Dust in the wind
 All we are is dust in the wind, oh
 
 Now, don't hang on
 Nothing lasts forever but the Earth and sky
 It slips away

 And all your money won't another minute buy
 Dust in the wind
 All we are is dust in the wind (all we are is dust in the wind)
 Dust in the wind (everything is dust in the wind)
 Everything is dust in the wind
 The wind


【解説】
アメリカのプログレッシヴ・ロックバンド、カンサスの絶頂期1977年に発売され、前作の「永遠なる序曲」(Leftoverture)とともに、カンサスの代表作とされるアルバムである「暗黒への曳航」(Point Of The Know Return)に収録され、シングルヒットもしたカンサスを代表する曲の一つである。。

ものすごい虚無感で押し通される詞である。どんなにがんばっても所詮時は過ぎ去り、何も残らない、何も残せないのだと歌う。夢を持つことも歌を歌うことも結局意味がないじゃないか、それなら風に吹かれて飛んでいる埃と同じじゃないかと。

曲はアコースティック・ギターのアルペジオが美しいスローでアンプラグドな小品といった趣で、間奏にヴァイオリンが入るなど、叙情的な響きを持っている。

だから詞とは裏腹に、実は、虚無感を抱きながらも、冷めているわけでも、悟っているわけでも、投げやりになっているわけでもなく、そんな自分や自分の人生に価値がないなどと思いたくないという、悲しみや虚しさの感情が曲全体にあふれている。それがこの曲の大きな魅力だと言えるだろう。

シンプルな歌詞、覚えやすいメロディー、悲しみの表現、美しく染み入る演奏、そして垣間見える人間らしさ。大ヒットがわかる名曲だ。これを普段はプログレ・ハードな曲を演奏しているバンドが出したという意外性もあっただろう。

ちなみにタイトルの「Point Of The Know Return」とは、「カンザス州トピーカ(Topeka)からやってきた少年たちが、突然自分たちはもう引き返せないんだとわかる、驚くべき一瞬を捉えたものである。」と、「ローリング・ストーン」誌のデイヴィッド・ワイルド氏はアルバムの解説に書いている。Topekaは彼らの出身地だ。

ピンク・フロイドが「狂気」の成功で急激な生活の変化と、大きなプレッシャーと、社会的なイメージと自分自身のイメージの乖離に混乱したのと同じことが、当時の彼らにもあったのかもしれない。この詞はそんな自分たちのことを歌ったのかも。

デイヴィッド・ワイルド氏の解釈も結果的に当たっているのだろうけれど、もともと“point of no return”とは航空用語で「帰還不能点(これ以上は帰還できなくなる飛行限界地点)」を示す言葉だそうだ。そのno(できない)をknow(知っている)に置き換えたオリジナル表現なのだ。「みんなも、ちょっと面白いんじゃないかって思ったのさ、聞くとちょっと気持ちが混乱するだろ。」とはカンサスのマネージャーの言葉(CD付属のブックレットより)。

「Leftoverture」と同じで、遊び心からつけられたタイトルだというわけだ。


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