2009年2月7日土曜日

「21世紀のスキッツォイドマン」キング・クリムゾン



■「クリムゾン・キングの宮殿
「In The Court Of The Krimson King」収録





猫の忍び足 鉄の爪
神経外科医達はさらに多くを求めて叫ぶ
妄想者の有毒な扉のところで
21世紀の精神病

血塗られた拷問台 有刺鉄線
政治家を火葬するための薪の山
ナパーム弾の炎に侵される無垢なる者たち
21世紀の精神病


死の種 理性なき者の強欲
詩人に飢えた子供達は血を流す
本当に欲しいものを彼は何一つ得られない
21世紀の精神病


 Cat's foot, iron claw
 Neuro-surgeons scream for more
 At paranoia's poison door
 Twenty-first century schizoid man

 Blood rack, barbed wire
 Politicians' funeral pyre
 Innocents raped with napalm fire
 Twenty-first century schizoid man

 Death seed, blind man's greed
 Poets' starving children bleed
 Nothing he's got he really needs
 Twenty-first century schizoid man

【解説】
「クリムゾン・キングの宮殿」(原題:「In The Court Of The Crimson King」)はKing Crimsonの1969年のデビューアルバムにして、プログレッシヴ・ロックを代表する完璧な作品。その最初の曲が「21世紀のスキッツォイドマ ン」である。King Crimsonワールドに引き込む強烈な曲だ。

ちなみに以前は「21世紀の精神異常者」と訳されていた。原文の“schizoid man”は日本では“精神分裂病者”と言っていたが、現在では“統合失調症者”と呼ぶようになっているためタイトルも変えられたと思われる。

詞には悲惨な現実を暗示した様々な言葉がイメージとして積み重なる。そしてそこにたたずむのは、当時から見た21世紀という未来の男。それはあなたであり私である。そしてその男自身も病んでいる。

作詞はPeter Sinfield(ピート・シンフィールド)。荒々しいIan McDonald(イアン・マクドナルド)のサックス、イコライズされた吐き捨てるようなGreg Lake(グレッグ・レイク)のボーカル、間を埋めるように細かく切れ込むMichael Giles(マイケル・ジャイルズ)のドラム、中間部の疾走感あふれるインストパートでのねじれたような強烈なRobert Frippのギター。全てが絶望と怒りをたたきつけるような音なのだとわかる。

ベトナム戦争の長期化や北爆(1965年)といった非人道的行為に非難が集まっていた当時の、反体制的な思いが込められていると取ることもできるだろう。それを21世紀でさらに悲惨な状況になっているものとして描いたところに、絶望の深さが感じられる。

しかし舞台を21世紀という未来に設定することで、直接的な政治批判や体制批判ではない、幻想性が持ち込まれて展開する非日常的狂気の世界となった。焦点はむしろ“今を生きる事への絶望”にあり、歌詞としてはより普遍性を得たと言えるだろう。

刺激的なイメージを重ねた上で、各連の最後で繰り返される「21世紀の精神病者」という一文は、そうした悲惨な現実の中で正常な精神を保てなくなった“普通の”人間を代表しているのだろか。

リスナーの度肝を抜き、1970年代のプログレッシヴ・ロック興隆の狼煙を上げた一曲。


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