2009年2月21日土曜日

「ジ・アンダーカバー・マン」ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター

原題:「The Undrcoverman」

■「ゴッドブラフ」(Godbluff)収録




 さあこの鏡を前で すべてのいつもの問題
 そしてすべてのいつもの茶番だ
 おまえはためらうような声で尋ねる 「君はどうするんだ」って
 まるで歌う茶番を続けること以外に
 選択肢があるかのように
 そしてお前は 万事う
まくいくことを願っている

 今夜 なんだかすべてが変な感じだ
 僕の魂はかたくなで
 僕の身体は狂い乱れている
 でも それも単なる一つの見方に過ぎないけど
 そして 僕らは二人の間に思い違いなどない
 僕の変わることのない友人、常に身近にいてくれた
 おまえ そして 秘密捜査員

 僕は思案する:「時間が過ぎていくこと意外に
 
それがいったい何を意味しているか
 わからないまま
 こんな変化を体験しているなんて
 とても不思議だ…」
 
 あぁ、でも僕は考えるのを止める
 いっそのこと 万事うまくなんかいかなくていいくらいだ

 この錯乱状態は 完全な感情が再び戻ってきた波なのか
 それとも 秘密捜査員の隠れ家なのか
 あるいは 熱心な信仰の証が記されている
 連祷(れんとう:司祭の祈りに会衆が唱和する形式)なのか
 あるいは ダムにひびが入ったということなのか

 ひびが入ったのだ;打ち砕かれ、おまえの上にどっと降り注ぐ
 そんな惨事を予想できる程の分別などなかった
 今 うろたえながら おまえは空気を求めて勢いよく飛び出す
 溺れながら、おまえは知
る 
 お前は 何かではなく誰でもなく
 自分自身を愛することを知る
 そしておまえを助けようと伸ばされたこの手さえ
 拒むことだろう
 
 でも今この時 試練のただ中にいるお前を置いて
 僕は去ることができようか?
 おまえが泣き叫んでいるのを ここにいて見ているのは
 僕の間違いなのか?

 もしおまえが去らずに 自分自身で何とかしようとしていたなら
 今頃は 周りにいる妄想の人影に気づき
 自分自身に知らせていたことだろう
 
 しかし今でもまだ 僕らは途方に暮れてはいない:
 もしおまえが夜 外を見るなら、
 様々な色や光が、人々は遠くには言っていないわ
 少なくとも遥か彼方というわけではないわ、と
 言っているかのようであり
 そして僕らがここに居続けるのは
 単なる僕らの無言の抵抗なのだということが わかるだろう

 錯乱状態がやって来ても、溢れささせておけばいい
 そして僕の上には やさしく
 弱くて神聖で呪われた僕の一部を 与えておくれ
 僕の生命を癒
し 僕の魂と生活を 完全に取り去らせておくれ
 僕を あるがままの自分にさせておくれ

 縦一列に並んで 僕らが一緒に走る時間はもうないのかもしれない -
 地平線が 幾重にも平行線を描きながら呼びかけてくる
 一つのやり方を永遠に持ち続けることは 
 良いことではないかもしれないよと
 そして おまえにはまだ時間がある
 まだ時間があるよと



 Here at the glass -

 all the usual problems, all the habitual farce.
 You ask, in uncertain voice,
 what you should do,
 as if there were a choice but to carry on
 miming the song
 and hope that it all works out right.
 
 Tonight it all seems so strange -
 my spirit feels rigid, my body deranged;
 still that's only from one point of view
 and we can't have illusion between me and you,
 my constant friend, ever close at hand -
 you and the undercover man.
 
 I reflect:
 'It's very strange to be going through this change
 with no idea of what it's all been about
 except in the context of time....'
 Oh, but I shirk it, I've half a mind not to work it all out.
 Is this madness just the recurring wave of total emotion,
 or a hide for the undercover man,
 or a litany - all the signs are there of fervent devotion -
 or the cracking of the dam?
 
 It's cracked; smashed and bursting over you,
 there was no reason to expect such disaster.
 Now, panicking, you burst for air,
 drowning, you know you care
 for nothing and no-one but yourself
 and would deny even this hand
 which stretches out towards you to help.
 But would I leave you in this moment of your trial?
 Is it my fault that I'm here to see you crying?
 These phantom figures all around you should have told you,
 you should have found out by now,
 if you hadn't gone and tried to do it all by yourself.
 
 Even now we are not lost:
 if you look out at the night
 you'll see the colours and the lights
 seem to say people are not far away,
 at least in distance,
 and it's only our own dumb resistance
 that's making us stay.
 When the madness comes
 let it flood on down and over me sweetly,
 let it drown the parts of me weak and blessed and damned,
 let it slake my life, let it take my soul and living completely,
 let it be who I am.
 
 There may not be time for us all to run in tandem together -
 the horizon calls with its parallel lines.
 It may not be right for you to have and hold in one way forever
 and yet you still have time,
 you still have time.
 
【解説】
この曲はイギリスのバンド「ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター(Van Der Graaf Generator)」の1975年の復活作「Godbluff」の最初の曲である。ささやくような声からシャウトにまで高まる、ピーター・ハミルのボーカルの凄さを堪能できる一曲だ。

こ の詞には「I」と「you」が出てくる。しかしこれは自分自身との対話、希望を求めて苦悩している対話なのだと考える。だから冒頭の「Here at the glass」のglassをlooking glassと取り「鏡」と訳した。もちろん「ガラス、コップ」などの色々な意味がある言葉だ。そして自分との対話が始まる。二人の自分、あるい は自分の二つの面で強いのは無気力な方、だからそちらが「僕」なのだ。

最初「僕」は「おまえ」を突き放して見ている。「おまえ」は「どうするんだ?」と聞くが、どうしようかと考えるような選択肢なんかないじゃないかと「僕」は思っている。

し かし今日の「僕」は少し変(strange)だという自覚がある。何かが変わろうとしている。「僕」と「おまえ」は常に身近にいる存在。「友」であり「秘密調査員(undercover man)」。「undercover」には「秘密の、スパイ活動の」という意味がある。自分の自己欺瞞を知らぬ間に暴いている、もう一人の自分という感じ か。「おまえ」は純真で無垢な存在。意識しなくても「わたし」の欺瞞に気づいてしまう。

その「おまえ」は「僕」に「どうするんだ?」と聞 くように前向きである。「すべてうまくいくことを願っている」のだ。そして今の自分の変化、一種の錯乱状態が、前向きな「おまえ」を押しつぶそうとする。 しかしその刹那「おまえ」は「自分を愛することを知り」、自分の力で生きていこうとする。

怠惰な「僕」は、自問を繰り返しながら、それで も「おまえ」を助けようとする。一緒にいようとする。そして「僕らはまだ途方に暮れてはいない」「無言の抵抗なのだ」と、逆に混乱している「おまえ」を導 くかのような言葉を言う。人と交わらずに己との対話を選んでいるという自覚が伺える。「僕」は最初より強くなってきている。

「弱くて神聖で呪われた僕」こそが「あるがままの僕」、「自分を愛することを知る」ことができた「お前」、両方とも実は一人の自分。行き方を模索する時間はまだある。生きる意味を考える時間はまだある。

「僕」は「おまえ」との対話の中で、より強い自分を得ようとしている。もちろん結論はでない。でも時間はまだある。そこには希望がまだ残っている。

自分の存在を問う詞であると思う。しかし曲が静かなささやき、あるいはつぶやきのような声に始まり、朗々と歌うラストを迎えることを考えると、希望を持とうとした歌であると思う。

ヴァ ン・ダー・グラフ・ジェネレーターは、1971年の「ポーン・ハーツ」というアルバムを最後に活動を停止していた。本作「Godbluff」は再スタート を記念するアルバムとなる。その最初の曲が、屈折しながらも希望のある曲であることは、ある意味再スタートへの意欲の現れなのかもしれない。

ただしタイトルの「Godbluff」は造語で、「God bless」(神のご加護がありますように)をもじった意味「God bluff」(神のはったりがありますように)を連想させるのだが、さてどうだろう。

ちなみにバンダー・グラフ・ジェネレーターとは「バンデグラフ起電機 (Van de Graaff generator)」という、静電発電機の一種。2ndアルバムのジャケットはそれをドラマチックに描いたものか。
 







2ndアルバム「The Least We Can Do Is Wave To Each Other」のジャケット


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