2009年3月16日月曜日

「スーン」(「錯乱の扉」より)イエス


原題:Soon (The Gates Of Delirium)

■「Relayerリレイヤー)収録






まもなく まもなく光がやってくる

内側に射し込んできて この終わりなき夜に慰めをもたらしたまえ
そして この場所であなたを待ちたまえ
ここにあるべきは 我々の理性

まもなく まもなく時がやってくる我々が手に入れようとしたもの全てに 我々の手が届き 我々は落ち着きを取り戻すだろう

心は開かれ
ここにあるべきは 我々の理性

かつて 詩に込められた理性


まもなく まもなく光がやってくる

常に形作ろうとしている我々のもの 正しい考え
太陽は我々を導き
ここにあるべきは 我々の理性

Soon, oh soon the light

Pass within and soothe this endless night
And wait here for you
Our reason to be here

Soon, oh soon the time

All we move to gain will reach and calm
Our heart is open
Our reason to be here

Long ago, set into rhyme


Soon, oh soon the light

Ours to shape for all time, ours the right
The sun will lead us
Our reason to be here

Soon, oh soon the light

Ours to shape for all time, ours the right
The sun will lead us
Our reason to be here

【解説】
傑作アルバム「危機(Close To The Edge)」を作り上げて、さらにその先へ進もうとしたYesが、キーボードにパトリック・モラーツ(Patrick Moraz)を迎えて前人未到の領域に達したアルバムが、この8枚目のアルバム「リレイヤー(Relayer)」(1974)である。

その内容は混沌としたパワーに満ちた壮絶なもので、整然と組み立てられた「危機(Close To The Edge)」とは別のピークに達している。メンバー全員が何かに取り憑かれたようにパワーを発散させている。


全3曲という大作ばかりの中で、LP時代にA面すべてを使った「錯乱の扉」が約22分の超大作。ボーカルのジョン・アンダーソン(Jon Anderson)によると、その基本コンセプトは、なぜ我々は戦争をし続けなければならないのか、なのだという。「前奏曲があって、突撃、勝利の曲と続き、未来への希望を込めた平和で終わるんだ。(「イエス・ストーリー」シンコー・ミュージック、1998年)」


そしてそのラスト5分前くらいから始まるのが、この「Soon…」で始まる“未来への希望を込めた平和”を歌うパートだ。それまでの喧噪がウソのように静まり、ジョンが歌い上げる美しいラストだ。後に「ドラマ(Drama)」というアルバムでイエスのメンバーとして歌うことになるトレヴァー・ホーンは、「終わりになってジョンが“Soon…”と歌い始めると、僕は泣きたくなった。(「イエス・ストーリー、同上)」と語っている。


このラストの部分は「SOON」というタイトルで1975年にシングルカットされたり(ちなみにB面は「サウンド・チェイサー」)、コンサートでも単独で歌われたりする、それ自体で独立した扱いも受けている部分である。


戦闘が終わり、例え勝利したとしても多くの犠牲、多くの破壊を余儀なくされた荒廃した世界と荒廃した心が、暗闇の中で光が射すのを待ち望んでいる。


「錯乱の扉」では「you」は2回出てくる。最初は曲の前半部分の「As leaders look to you attacking」(指導者たちは、あなたが突撃するのを期待しているのだから)という部分、そしてこの「soon」の第1連、「wait here for you」(ここであなたを待ちなさい)である。


途中「Listen your friends have been broken They tell us of you poison(聞け、あなたの友だちは破れ続けている 彼らは我らにあなたのことを不快な人物だと言っている)」とあり、「Now we know Kill them give them as they give us」(これでわかったろう、やつらを殺せ、やられた分だけやりかえすのだ)と続く。戦争の狂気。「Listen should we fight forever(聞け、我らは永遠に闘い続けなければならないのか?)」と自らに問うた後である。


したがって「we」も「you」も、戦争に否応なく巻き込まれ、友を裏切り、友に裏切られ、憎しみと殺戮にまみれた人々であろう。


そこで戦争が終わった時、我々は「光」を求め、暗闇を照らし戦いに疲れた「you(あなた)」が戻ってくるのを待とうと言っていると解釈した。戦争の狂気は去り、「reason(理性)」こそが今ここに必要なのだと思いながら。「time(時)」がまた自分たちに必要なものを取り戻し、心の平安をも取り戻すだろう。


我々が必要としているもの、それは「the right(正しい考え)」であり、そこに導いてくれるのは「light」であり、そして「the sun」なのだ。


戦闘場面をイメージさせるSEなどが実際の戦争を思い浮かばせるが、見方を変えれば私たち個人の日々の生きる戦いと重ねることもできる。歌詞の曖昧さは、この曲に戦争描写のための音楽ではない広がりを与えている。


しかし、未来形の文章が使われていることからもわかるように、救われたのではなく、救われることを望み祈る歌である。何か宗教的な神聖さが宿る歌である。特にそれまでの狂騒的サウンドバトルの後に歌われることで、その魅力をさらに高めていると言える。


6 件のコメント:

  1. Our reason to be here は「その理由で我々はここにいる」だと思っていました

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    1. コメントありがとうございました。
      「(それこそが)我々がここにいる理由なのだ」ですね。
      「戦争=狂気⇔理性」みたいな考えにわたしは捕われ過ぎていたかもしれません。
      もう一度考えてみたいと思います。
      ご意見採用させていただくかもしれませんが、よろしくお願い致します。
      貴重なアドバイス、ありがとうございました!

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  2. 「危機」の歌詞を探していたところ、たまたまこちらを見つけ拝見しました。
    私も「我らがここにいる理由」と解釈してました。
    理性という解釈にも唸りました。
    ちなみに、最後の下りは、、、
    太陽が我らを導いてくれるのだ、心を開けば道も開ける、それが出来るから我らはここに生きている、勇気と自信を持って今を生きよう、的な意味で捉えております。
    ちょくちょく参考にさせて頂きます。
    ありがとうございます!

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    1. コメントありがとうございました!
      貴重なご意見をありがとうございます。まだまだ手探りですが、これからもよろしくお願いします。

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  3. イエスは高校時代から好きでコンサートも3回くらい行っています。リレイヤーは今ひとつ好きになれず、今回イエスの来日のためいろいろ聞いていて、錯乱の扉を聞いていたら、この曲の終盤、今までにないほど心に染み渡り、かつてないほど感動しました。何回も聞いた曲ですが、改めて歌詞を知りたくて検索したところ、このページに出会いました。イエスの歌詞は文学的というより形而上学的・宗教的・哲学的・抽象的で難解でしたが、戦争から平和というわかりやすい解説で、この解説にまた感動しました。ありがとうございました。

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    1. コメントありがとうございました! 
      とても大きな励みになりました!

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