2009年3月13日金曜日

「クリムゾン・キングの宮殿」キング・クリムゾン


原題:The Court Of tThe Crimson King

■「クリムゾン・キングの宮殿
In The Court Of The Crimson King」収録






投獄された長い歳月 つながれた錆びた鎖は
太陽によって粉々にされる
わたしは道を歩む 視野は移り変わり
騎士たちの馬上仕合いが始まる
紫の服を着た笛吹きが曲を演奏する
聖歌隊は 古代語による三つの穏やかな歌を
優しく歌う
深紅の王の宮殿のために

街のカギを持つ者たちは
夢に鎧戸をつける
わたしは巡礼者たちの扉の外で待っている
計画もままならないままに
黒衣の女王が葬送行進曲を歌う
ひび割れた真鍮のベルが鳴り響くだろう
火の魔女を呼び戻すために
深紅の王の宮殿へと

庭師は多くの常緑樹を植える
一本の花を踏みつぶしながら
わたしは 7色の船から届く風を追い求める
その甘酸っぱい香りを味わうために
縞柄の服を着た曲芸師が 手を上げ
砥石(といし)車をゆっくり回すように
オーケストラが演奏を始める
深紅の宮殿の中で

落ち着いた灰色の朝には 未亡人たちは泣き
賢者たちはジョークを言い合う
わたしは走り
わざと倒されたふりをする合図を得る
悪ふざけを満足させるために

黄色い服を着た道化は 自ら演じようとはしない
しかし静かに紐を引き
人形たちが踊ると微笑む
深紅の王の宮殿の中で


The rusted chains of prison moons
Are shattered by the sun
I walk a road, horizons change
The tournament's begun
The purple piper plays his tune
The choir softly sing
Three lullabies in an ancient tongue
For the court of the Crimson King

The keeper of the city keys
Put shutters on the dreams
I wait outside the pilgrims' door
With insufficient schemes
The black queen chants the funeral march
The cracked brass bells will ring
To summon back the fire witch
To the court of the Crimson King

The gardener plants an evergreen
Whilst trampling on a flower
I chase the wind of a prism ship
To taste the sweet and sour
The pattern juggler lifts his hand
The orchestra begin
As slowly turns the grinding wheel
In the court of the Crimson King

On soft gray mornings widows cry
The wise men share a joke
I run to grasp divining signs
To satisfy the hoax
The yellow jester does not play
But gently pulls the strings
And smiles as the puppets dance
In the court of the Crimson King



【解説】
King Crimsonの1969年のデビュー作にして時代を超えた傑作「クリムゾン・キングの宮殿(The Court Of The Crimson King)の表題曲である。アルバムの最後を飾る超弩級シンフォニックサウンドだ。

少しエコーのかかったような雄大なメロトロンの深みのある音から曲は始まる。グレッグ・レイク(Greg Lake)のボーカルはメロトロンとコーラスによる印象的なメロディーにつながる。中間部のフルートによる静かなパートも美しい。逆に様々なタイミングでスネアを打ち込むマイケル・ジャイルズ(Michael Giles)のドラミングが、曲の雄大さに緊張感を与えている。



さてでは歌詞をどうとらえるか、である。まずタイトルからいくと、王の名前は普通「King…」となる。例えばアーサー王なら「King Arthur」である。したがってKing Crimsonというバンド名は、「クリムゾン王」という王の名前と解することができるが、この曲のタイトル「Crimson King」というと、「crimson」は王の名前ではなく、修飾語として「深紅の」あるいは「血なまぐさい」という意味で使われていると言える。


歌詞は4連からなる。この1連が全体理解のためのポイントか。「moon」は「月」だが複数形「moons」となると「一月」、つまり「month」と同じ意味を持つ。そこで「prison moons」を「投獄された長い歳月」と訳した。つながれた鎖が錆びる程に。

しかし朝の光に鎖は解かれる。わたしは牢獄から解放されたのだ。そしてトーナメント(騎士による馬上試合)が始まる。そうなのだ、わたしが幽閉から解かれたのはトーナメントに出るためだからである。トーナメントは時代とともに次第に競技的な色彩が強まっていったが、初期の頃は、実践さながらのまさに殺し合いに近いものであったという。

またトーナメントはイベント的な面も持ち、多数の王侯や貴婦人が見物し、主催する側の権威を見せつける場にもなったという。当然「わたし」が向うトーナメント会場までの町の様子は、一種のお祭り騒ぎである。

街から出るカギは取り上げられ、人々は別の夢を見ることなくここで暮らしている。自然は無視されすべては権力の下にコントロールされている。だから常緑樹は植えるが、
一本の花は無視され、踏みつけられる。寂しい明け方に泣き声を上げるのは、トーナメントで命を失った戦士の未亡人たちか。

そうした光景、街のあり方を見ながら、「わたし」はトーナメントに参加する。誰か高貴な人間がいたずらに考えた悪ふざけ(hoax)を実行するために、わざと倒れる合図(diving signs)を見ながら相手に向って突進していく。

深紅の王は出てこない。しかし全ては彼の宮殿で行われている。「rusted(錆びた)」、「cracked(ひびわれた)」、「ancient(古代
の)」「funeral(葬送の)」「jagglar(曲芸師、道化師、詐欺師)、「hoax(わるふざけ)」などの、暗く醜いイメージの言葉と、それとは対照的に、「purple(紫の:高貴な意味を持つ)」、「black(黒の、黒衣の)」、「fire(火の、火のように輝く)」、「evergreen(常緑の)」、「prism(プリズムの、七色の)」、「pattern(縞柄の)」、「grey(灰色の)」、「yellow(黄色の服を着た)」、そして「Crimson(深紅の)」と様々な色がこの歌詞の中に使われている。

暗くいかがわしく閉ざされた世界。しかし見た目は色鮮やかに創られた幻想的な世界。荘厳で神々しい曲調とは裏腹に、歌詞はいかさまトーナメントに出される「わたし」の目を通して、その世界を混沌としたものと見ている。それは、サウンドこそ異なるが「21st Schizoid Man」や「Epitaph」と中味はつながっていると言えるのではないか。

と、このイメージ豊かな歌詞を解釈してみたがいかがであろうか。

(右図は1956年にドイツで出版された職人図に掲載された砥石車)


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