2009年3月15日日曜日

「ハウス・ウィズ・ノー・ドア」ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター


原題:House With No Door(ドアのない家)

「H to He Who am the Only One(天地創造)」収録





ドアのない家がある 私はそこに住んでいる;
夜は寒く 昼間は中にいるのが耐えられないくらいつらい
屋根のない家がある だから雨が入り込んでくる
私が時間について考えぬこうとしていると 頭の中にまで降ってくる
あなたのことは知らない、あなたは私を知っていると言うけれど きっとそうなんだろう
私には不確かなことが多過ぎる
あなたは私の名を呼ぶ でも不自然に聴こえる
私はどう感じていいかも忘れている:
私の身体は治ることを拒否し続けているし

ベルのない家がある でも誰もやっては来ない
私は時々 家の外で人が行きているのかわからなくなっていることに気づく
音のしない家がある;そう、そこは静かだ
言葉にはたいした意味はない 同じ時を共有する人がいないなら
私はすでに自分の台詞を憶えた とてもよくわかっている 準備もできている
どんな人がついにやって来ることになっても大丈夫なように
夜には冷たくなってしまう私の心にある台詞を…
小さな暗い人影が走っているのは
好ましくないように思える

ドアのない家がある そこには生活はいない
ある日そこは一つの壁になったことがあった…その時私は全く気にもしなかったが
光のない家がある 窓はすべてふさがれている
酷使されゆがんで - 今 時間以外にわかるものはない
あなたのことは知らない、あなたは私を知っていると言うけれど きっとそうなんだろう
私には不確かなことが多過ぎる
あなたは私の名を呼ぶ でも不自然に聴こえる 私はどう感じていいかも忘れている
私の身体は治ることを拒否し続けているし
誰か私を助けてはくれないか……?


There's a house with no door and I'm living there;
at nights it gets cold and the days are hard to bear inside.
There's a house with no roof, so the rain creeps in,
falling through my head as I try to think out time.
I don't know you, you say you know me, that may be so,
there's so much that I am unsure of.
You call my name, but it sounds unreal,
I forget how I feel: my body's rejecting the cure.

There's a house with no bell but then nobody calls;
I sometimes find it hard to tell if any are alive at all outside.
There's a house with no sound; yes, it's quiet there -
there's not much point in words if there's no-one to share in time.
I've learned my lines, I know them so well, I am ready to tell
whoever will finally come in
of the line in my mind that's cold in the night. It doesn't seem right
when there's that little dark figure running.

There's a house with no door and there's no living there:
one day it became a wall...well I didn't really care at the time.
There's a house with no light, all the windows are sealed,
overtaxed and strained - NOW NOTHING IS REVEALED BUT TIME
I don't know you, you say you know me, that may be so,
there's so much that I am unsure of.
You call my name, but it sounds unreal, I forget how I feel,
my body's rejecting the cure.
Won't somebody help me……?


【解説】
「HOUSE WITH NO DOOR」は、ヴァンダー・グラフ・ジェネレーターの1970年の作品「H to He Who am the Only One(天地創造)」の2曲目に収録されている。1曲目が「KILLER(殺し屋)」という重く攻撃的なサウンドに続いて、静かに厳かにピアノをバックに歌われる悲しみに満ちた曲。

前作までのメンバー、ニック・ポッター(Nick Potter)がレコーディング途中で脱退したため、ベース専任がいない。実際はニックが3曲ベースを弾いており、残りの曲をヒュー・バントン(Hugh Banton)がキーボードと兼任しているが、本アルバムの担当楽器にはベースとは書かれていない。キーボードの低音部、あるいはベース・ペダル等で補っていると思われる。しかしベース音が弱いことが結果的に、全体的な音像の神経質さや繊細さ、音のストレートさが伝わることとなり、作品を魅力的なものにしていると言える。

この曲は社会的な関わりを持たず、孤独と向き合いながら生きている「私」の独白である。「わたし」は人と関わるための台詞も完璧に憶えていて、誰かが訪ねてくれるのを待っている。「あなた」という、「わたし」の名前を知っている存在すらいる。でも「わたし」には何一つ確かなものはない。誰ともつながっている実感がない。

積極的に関わりを断ち、世界との関係を拒否しているのではない。逃げているのではない。「私」には狭く、暗く、屋根もないボロボロの小さな空間で、感情も肉体も孤立したまま、時が過ぎることだけが明らかなまま、生きている。実感としての関わりを求めながら。崩れそうになる自分をかろうじて保ちながら。

強烈な孤独と悲しさに満ちた曲である。ピーター・ハミルは、全てを諦めたように歌い始め、次第に切々と訴えるように高揚していく。最後につぶやく言葉「誰か私を助けてくれないか……?」が重い。間奏のフルートも美しい。

タイトルの「H to He Who am the Only One」であるが、付属のブックレットには次のように書かれている。

「水素(Hydrogen)原子核からヘリウム(Helium)原子核への核融合が、太陽や惑星内部で行われている基本的な発熱反応であり、それゆえに宇宙の主要なエネルギー源なのである。」

したがってタイトルは「唯一の存在である水素からヘリウムへの融合」となるが、関係代名詞に人を指す「who」そしてbe動詞に「is」ではなく「am」を使っていることで、モノではなく人をイメージさせる表現になっているところがポイントだ。つまり「He Who am the Only One」(たった一人の彼)というつながりも意識に上ってくるのだ。文法的には「He」なら「is」なんだけど、わざわざ「am」と言っているのは、それによって「He」とありながら「I」をどうしても連想してしまうからだ。実は自分「I」のことだというイメージが含められているのだ。

つまりタイトルには「宇宙の根源的エネルギー」と「私の孤独」が含まれたものと言える。さらに言えば、“この宇宙の基本は、私という孤独である”というメッセージが込められているとも取れるかもしれない。もちろん「私」はピーター・ハミル個人のことではなく、人それぞれ個々のことであろう。

悲壮感にまみれながら、とても美しい名曲である。

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