2009年3月6日金曜日

「エコーズ」ピンク・フロイド

原題:ECHOES

「おせっかい(Meddle)」収録







頭上ではアホウドリが空中で動かずにとどまっている
そして揺れる波間のはるか海底の
珊瑚の洞窟の迷宮の中で
遠い時代の残響が 砂地を越え 柳がたゆたうように届いてくる
そして すべては緑色で海の底にある

誰も わたしたちを陸へ導きはしない
誰も そこがどこで なぜそこにいるのか知らない
でも何かが動きだし 何かが試しだし
今光に向って上り始めた

通りを歩いている他人の二人が
偶然に それぞれの視線を合わせる
そしてわたしはあなた わたしが見ている人がわたし
わたしはその手をつかみ
その地を案内してまわり
自分ができる最上のものが何かを 理解できるように
自分の手助けをする

誰も 先へ進ませようとしない
誰も 無理矢理わたしたちの目を閉じさせようとはしない
誰も話さず 誰も試みない
誰も 太陽の周りを飛び回らない

雲一つない毎日 あなたは目覚めたわたしの目に飛び込んでくる
起き上がるようにと 誘い励ます
壁の窓を抜けて 日の光の翼をはためかせ 流れ込んでくる
無数の光り輝く 朝の大使が

誰も わたしに子守唄など歌わない
誰も わたしの目を閉じようとはしない
だから わたしは窓を広く開け放つ
そして 空の向こうのあなたへ呼びかける


Overhead the albatross hangs motionless upon the air
And deep beneath the rolling waves
In labyrinths of coral caves
The echo of a distant time
Comes willowing across the sand
And everything is green and submarine

And no-one showed us to the land
And no-one knows the wheres or whys
But something stirs and something tries
Now starts to climb towards the light

Strangers passing in the street
By chance two separate glances meet
And I am you and what I see is me
And do I take you by the hand
And lead you through the land
And help me understand the best I can

And no-one calls us to move on
And no-one forces down our eyes
No-one speaks and no-one tries
No-one flies around the sun

Cloudless everyday you fall upon my waking eyes
Inviting and inciting me to rise
And through the window in the wall
Come streaming in on sunlight wings
A million bright ambassadors of morning

And no-one sings me lullabies
And no-one makes me close my eyes
So I throw the windows wide
And call to you across the sky

Live at Pompeii の一場面

【解説】
Pink Floydが、大ヒット作「The Dark Side Of The Moon(狂気)」の前に出した1971年の作品「Meddle(おせっかい)」で、旧LPのB面すべてを費やして作り上げた大作が、この「Echoes(エコーズ)」である。

1970年に発表した「Atom Heart Mother(原子心母)」のタイトル曲も、LP片面全てを使った大作であったが、「Atom Heart Motherの場合は、オーケストラ、混声合唱、SEなど、様々な外部の力を借りて、一つの作品にまとめあげたものであった。しかしこの「Echoes」は、彼らだけで、独自の音宇宙を作り上げることに挑戦し、みごとに成功しているのだ。

歌詞的には抽象的な表現なため、逆にイメージが広がり、曲の持つスケールの大きさに貢献していると言える。

1連は海の情景。上空でアホウドリが風を受けて静止したように浮かんでいる。広々とした海上の風景。そして目を海面下に転じると、海底奥深くの珊瑚の中で、遠い時代の残響(The echo of a distant time)が届いてくる。緑に染まる海中のできごとである。

「Comes willowing across the sand」という表現が出てくる。「willow」には自動詞はない。他動詞はあるが「ウィロー(開毛機、開繊機:洗毛の次の繊維加工過程で、不純物を取り除き、もつれをほぐすための機械)にかける」という意味しかなく、ここにはそぐわない。

そもそも「willow」は「柳」のことなので「willowing」は「柳が揺れるように」というイメージの造語だと解釈した。

2連で「us」と出てくるので、そこには「わたしたち」がいる。そして「echo」を耳にする。すると何かが動き始める。「わたしたち」の中の何かかもしれない。それが深海の緑の世界から、海面を通して差し込んでくる日の光に向けて上り始めるのだ。何かの始まりの予感がする。

3連では地上の通りでの話に場面が移る。他人と思っていた人と目が合った瞬間、それが自分だとわかる。これは自分の中でのある種の目覚めを物語っているのか。自分ができる最上のこと(the best I can)を自分に理解させようとする。

4連で再び「わたしたち」が出てくるが、「わたしたち」全体への働きかけはないという。しかし5連で再び「you(あなた)」が出てくる。これは3連で出て来た「わたし」が出
会った「わたし」のことか。そして「you」は、「echo」と同じように、「わたし」を起き上がらせようとする。光の大使たちが窓から射し込んでくる。2連で何かが浮き上がっていく際も、向っていくのは光だった。

そしてついに「わたし」は起き上がり、窓を全開にする。そして大空の向こうのあなた「you」に呼びかけるのだ。だれも強いて何かをさせようとはしない中で、自分で発見した自分の力によって、今新しい光の世界へと立ち上がろうとする「わたし」。

すべての起点は、
遠い時代の残響(The echo of a distant time)。つまり音。それはこの曲の最初に流れる「ピン〜」っていう音なのかもしれない。新しい自分、新しい世界が、遠い時代の音によって動き出す。Pink Floydがそれまでのサイケデリックで実験的な音楽、「太陽讃歌」のような、原始的な音の力を取り戻そうとする行為ともダブって見えてくる。

神秘さの中に希望が見えてくる一曲。

ちなみにこの曲は、ポンペイの廃墟でのライブ映像「Live at Pompeii 」での演奏が素晴らしい。観客のいない状態での演奏を収録した映像作品。これを見るとまさに、彼らは音で太古の力を呼び戻そうとしてるかのようである。こちらも必見の傑作。

DVDで出ていて、オリジナルとディレクターズ・カット版が入っているけど、断然オリジナルが良い。


3 件のコメント:

  1. ありがとうございます!

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    1. 喜んでいただけて嬉しいです!

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  2. 解説までつけていただいて、ありがとうございます(^-^) ♪

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