2009年3月3日火曜日

「スターレス」キング・クリムゾン

原題:Starless

「RED(レッド)」収録







日没 眩い陽の光
わたしの目を通ってくる金色の輝き
しかし目を内側に転じれば見えるものは一つ
星なき厳粛なる暗黒

古からの友人 博愛
ひどくゆがんだ微笑み
その微笑みはわたしにとっては空虚さを示す
星なき厳粛なる暗黒

緑がかった淡い青色と銀色に輝く空は
灰色へと色あせていく
誰もが切望する灰色の希望へ
星なき厳粛なる暗黒

Sundown dazzling day
Gold through my eyes
But my eyes turned within only see
Starless and bible black

Old friend charity
Cruel twisted smile
And the smile signals emptiness for me
Starless and bible black

Ice blue silver sky
Fades into grey
To a grey hope that all yearns to be
Starless and bible black


【解説】
1970年代キング・クリムゾンの最終作「レッド(Red)」の最後を飾る名曲。メロトロンが静かに響くイントロから叙情的なボーカルパート、緊張感が持続する中間部のインストゥルメンタルパート、そしてハードなインタープレイを経て、再び最初の叙情パートへと戻り、非常にドラマティックに終わる、キング・クリムゾンのサウンドの歴史を総括するような曲である。

歌詞は、イギリスの詩人ディラン・トマス(Dylan Marlais Thomas、1914-1953)の朗読劇「ミルクの森で(Under Milk Wood)」の序章に出てくる情景描写、

 それは春の小さな街の月もない夜
 空には星もなく荘厳なほどに暗い
 玉石を敷いた道路には人気もなく静かに曲がりくねり...「First Voice」


「キング・クリムゾン 至高の音宇宙を求めて」
(北村昌士著、シンコーミュージック、1981年)より

にインスピレーションを得て作られたとギターのロバート・フリップは述懐している。すでにこの言葉は前作のタイトル「Starless and Bible Black(暗黒の世界)」にも使われている。

しかしあくまでフレーズにインスパイアされたということで、ディラン・トマスの作品との関連性はないと言ってよいだろう。むしろアルバム「レッド」で歌われる救いのない世界、その世界の一部として描かれた、自らの内に広がる暗黒の世界を歌っている。

 
この詞が歌われる叙情的なパートは、まるですべてを失って嘆きの中にいるかのような悲痛さを秘めている。中間部のインストパートの荒々しさは、暗黒の持つエネルギーの強さでもあり、それへの苛立ちや怒りでもあるかのよう。しかしドラマチックに終わる最終部分で再びこの詞が歌われると、その存在を受け入れるしかないというあきらめの気持ちさえ伝わってくる。

その「厳粛なる暗黒」を具体的に説明し
ないことが、逆にリスナーの持つそれぞれの心の暗黒さに共振していくのかもしれない。










ちなみにThe Bible(聖書)で黒皮の装丁のものをWebで探してみた。一番左は1858年フランス製のアンティークの聖書(「てぽろぐ」より)、右二つはAmazon.co.jpの洋書から。

“Bible Black”という言葉はないが、言葉からイメージされる色とか質感は、こんな感じなのかもしれない。

2 件のコメント:

  1. 初めまして。
    とっても素晴らしい和約で、曲の良さがより私の中で深みを増しました。

    ありがとうございます。

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  2. コメントありがとうございます。
    お役に立てて嬉しいです。
    これからもよろしくお願い致します。

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