2009年3月29日日曜日

「ブレスレス(神秘の女王)」キャメル

原題:Breathless

■「Breathless」(「ブレスレス」)収録







彼女はぼくの最初の恋人
あらゆる点で優雅な人
丘の斜面を身にまとい
天空を夜から昼へと変える
そして彼女を見ると僕は必ず息をのむだろう

そても穏やかなこの静けさを
夜明け前、薄明の一瞬
世界中が生まれ変わりを待つ時に
彼女はもたらす

誰も彼女の名前は知らず
誰も彼女がどうやってここに来るようになって
愛と希望を全ての人々に与えるようになったのか
知らない

この丘と同じくらい老いていながら
彼女の足下に広がる
平野に昇る朝の太陽のように若々しい
彼女に会うと
僕は必ず息を飲んでしまうのだ

She is my first love 
Graceful in all her ways 
Folding the hillside 
Turning the sky from night into day 
She won't fail to take my breath away   

So soft this silence 
She brings before the dawn 
A time of twilight 
When all the world waits to be reborn   

Nobody knows her name 
No one knows how she came to be here at all 
Giving her loving 
Hoping to everyone   

Old as the hills 
Young just like the rising sun over fields 
That lie away beneath her feet 
Ev'ry time we meet 
She takes my breath away 

【解説】 イギリスの誇る叙情派バンド、キャメルの1978年作「ブレスレス(Breathless)」のタイトル曲にしてアルバム最初の曲「ブレスレス(神秘の女王)」だ。

前作「Rain Dances」でオリジナルメンバーのダグ・ファーガソン(ベース)が脱退、代わって元ハットフィールド&ザ・ノースのリチャード・シンクレア(ボーカル、ベース)が加入というメンバー交替があったが、この「Breathless」ではさらにメル・コリンズ(サックス、フルート、クラリネット)が加入、表現の幅が広くなると同時に、そこはかとなくカンタベリー風な雰囲気も加わった。

さらにこの作品をもってオリジナルメンバーで、アンディとともにサウンドの核となっていたピーター・バーデンス(キーボード)が脱退するとことになる。メンバーの移動の激しい中で、次第にキャメルサウンドが変化していく過程にあるアルバムである。

息もつけない(breathless)ほどに美しい女性。彼女は僕だけの女性ではない。誰も彼女の名前もここへどうやって来るようになったかもしらない。それは知らないけど、彼女の存在は知っているのだろう。彼女はすべての人に愛と希望を与えているのだから。

「from night into day」、「before the dawn」、「like the rising sun」と、明け方の神秘的な夜明けからの陽光を思わせる言葉が、彼女のイメージに重なる。彼女は朝の光をもたらすような女性なのか。

逆ではないかなと思う。
それは「彼女」という人物のイメージではなく、そうした情景を彼女という「丘のように年老いて(Old as the hills)」「平野を照らす朝日のように若い」、“
自然の神のような女性”として擬人化したのではないか。

だから「わたし」がいつも息を飲んでしまうのは、イギリスの古くからある美しい田園風景のことではないか。特に明け方の静けさの中、ですべての存在が再び朝日を浴びて生まれ変わるかのような瞬間。「わたしの最初の恋人(my first love)」とは、そうした美しい自然、美しい時間に、幼い頃から触れていたことを言っているように思う。

やわらかなリチャード・シンクレアのボーカル、アコースティックギターの調べ、オーボエやフルートの音色、とても穏やかで気品のある名曲だ。

そこはかとなく漂うカンタベリーな雰囲気はこれまでのキャメルにはなかったもの。それを2曲目の「Echoes」が、アンディ・ラティマーのギターとピーター・バーデンスのキーボードと、細かなシンバルワークやスネアのドラミングが特徴のアンディ・ワードのドラムスで、一気にそれまでのキャメルの世界へ引き戻すのもアルバムの構成的に面白い。ボーカルもアンディ・ラティマーが取っている。


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