2009年3月10日火曜日

「ゆるやかな飛行」キャメル

原題:Air Born

■「Moonmadness
 ムーンマッドネス『月夜の幻想曲』)







天高く飛び続けるグライダーよ、翼を広げなさい
雲の上まで高く飛び上がり
天空で生まれ 螺旋を描いて飛びなさい
円を描くことに忙しくて おまえは決して地上触れることはない

おまえは海を見て 空を感じる
どこへ向っているのか いつ死ぬのか知らずに
わたしの心にあるものへの答えも知らずに
風に乗り 風の流れに合わせて向きを変えながら

人生はおまえを高みへ連れて行ったり、低空飛行させたり、
いずれにしても残るのは異なった痛みだけ
素早く動き続けるんだ 風や雨の中であっても
そして もし世界が回転し続けるなら
おまえもまた もう一度戻って来れるだろう


High flying glider, spread your wings
Flying high on a cloud
Born on the air, spiral around
So busy making circles
You never touch the ground

You see the sea, feel the sky
Don't know where you go when you die
Don't know the answers
To what's in my mind
Riding on the wind and turning with the tide

Life takes you up, it brings you down
Changes the pain that remains
Keep moving fast, though the wind and the rain
And if the world keeps spinning round
You'll be back again


【解説】
ファンタジックな音楽を奏でるイギリスのバンドCamelの、4枚目にしてオリジナルメンバー最後のアルバム「Moonmadness」からの曲である。

まずタイトルの「Air Born」だが、「airborn」1単語としては「空中の、飛行中の、空に舞い上がる」などの意味を持つ形容詞がある。2単語に分けることで「airborn」の「飛行中の」という意味に加え、詞の中に「Born on the air」(空で生まれ)とあるように、「空で生まれしもの」という意味も持つタイトルだと考えられる。

歌詞として確認しておきたいのが最初の行。国内版LPには「High flying diver,」とあり、「高く飛ぶダイヴァーよ、」と訳されているが、複数の歌詞サイトで確認したところ「High flying glider, spread your wings」が正解のようだ。その他にもLPでは最終連の歌詞が異なっているが、 通常は上記の歌詞が紹介されているようなので、そちらに従った。

空に生まれ、空を飛び続けるグライダーに向って、どこに行くかいつ死ぬか知らなくてよい。ただ自由に飛び回れと、その存在を認め励ましている内容である。ただし「わたしの心にあるものへの答えも知らずに」というところで、「わたし」がこの「グライダー」と関わりのある人物であることが示唆される。

最終連で、人生において高く飛んだり、低く飛ぶこともあるし、そのたびにいろいろな痛みが残るだろうと言う。それでも動き続けろと「わたし」は励ます。「わたし」は「グライダー」より経験豊かな存在であり、遠くから「グライダー」を見守っている。飛ぶのを止めること、地上に降りることなく、飛び回っている「グライダー」を応援している。

グライダーなので自力で強引に動くことはできない。うまく風をとらえ、上昇気流に乗り、風から風へと乗り換えながら、飛び続けなければならない。一度降りたら二度と空へは舞い上がれないのだ。それを人生とダブらせている。「Keep moving fast」という言葉が重い。

「地球が回転を止めなければ、おまえもまた戻って来れるさ」と、自分の目の届く範囲から消えることも覚悟している。あるいはただ「戻ってくる」だけでなく、「わたし」のところへ「戻って来てくれる」と言っているのかもしれない。その時には「わたしの心にあるものへの答え」を携えているのかもしれない。

そこにあるのは、自由奔放に、思うがままに生きている我が子を見る、温かい親の目か。あるいはもっと大きな神的なるものの愛情豊かな思いか。いずれにしても、大きな優しさにつつまれて、自由に大空を飛翔している姿が目に映る。

悲し気なフルートに始まり、天空を優雅に飛行するような美しく幻想的なインストゥルメンタル部分をはさんで、しっとりと歌われるこの曲は、キャメルの叙情面が一番強く出た、屈指の名曲であろう。


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