2009年3月27日金曜日

「聖地エルサレム」エマーソン・レイク&パーマー

原題:「Jerusalem

■「Brain Salad Surgery
 恐怖の頭脳改革)収録






古代のあの足が
イングランドの山々の緑の上を歩いたのか?
聖なる子羊が
イングランドの心地よい牧草地で見られたのか?

神聖なる表情が
雲で覆われた丘を照らしていたのか?
そしてこの暗い悪魔のような工場に
エルサレムが造られたというのか?

わたしに燃える金の弓を与えたまえ!
わたしに希望の矢を与えたまえ!
わたしに槍を与えたまえ:あぁ雲よ、消えうせよ!
わたしに炎の車を与えたまえ!

わたしは精神的戦いを止めはしない
わが手に剣を休めもしない

われわれがイングランドの緑豊かなすばらしきこの地に
エルサレムを建てるまでは

And did those feet in ancient time,
Walk upon England's mountains green?
And was the Holy Lamb of God
On England's pleasant pastures seen?

And did the Countenance Divine,
Shine forth upon our clouded hills?
And was Jerusalem builded here
Among these dark Satanic mills?

Bring me my bow of burning gold!
Bring me my arrows of desire!
Bring me my spear: O clouds unfold!
Bring me my Chariot of Fire!

I will not cease from mental fight;
Nor shall my sword sleep in my hand

Til we have built Jerusalem
In England's green and pleasant land.

【解説】
「エルサレム」(Jerusalem)は、18世紀イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの長詩「ミルトン」(Milton)の序詩に、同国の作曲家サー・カールズ・ビューバード・パリーが1916年に曲をつけた合唱曲。本来の題名は歌詞の冒頭から“And did those feet in ancient time”(古代あの足が)であるが、『エルサレム』の名で知られる。(以上「ウィキペディア『エルサレム(聖歌)』より)

ということで、イギリスのバンドで史上最高のキーボードトリオ、エマーソン・レイク&パーマー(以下EL&P)の最高作と呼ばれる「恐怖の頭脳改革(Brain Salad Surgery)」(1973年)の最初の曲である「聖地エルサレム」は、EL&Pのオリジナル曲ではない。

したがってオリジナルの長詩「ミルトン」において、詩全体の中で、この部分がどういう場面をどういう意図で書かれているかは、「ミルトン」の専門的な鑑賞や研究に譲しかない。しかしここではあくまで、「恐怖の頭脳改革」の最初の曲としての「聖地エルサレム」という曲の歌詞として見てみたい。

まず語り手は、このイングランドは緑豊かな穏やかな牧草地であったと言う。かつてここには「古代の足」や「聖なる子羊」がいて、聖地エルサレムも存在していたことも知っている。「聖なる子羊」は通常イエス・キリストを指す。「古代の足」とはそのキリストの足のことか。

そして語り手は、現在のイギリスの地が「雲に覆われた丘」や「暗い悪魔のような工場」と化していることを嘆いている。ちなみに、「リーダーズ英和辞典」(研究社)によると、「dark Satanic mills 暗い悪魔のような工場《Blake の詩 `Jerusalem' (Milton の序詩) の一節; イングランド北部のかつての暗鬱な工業都市を暗示》.」とある。

かつてこのイギリスは神がおり聖地エルサレムもあったが、現代においてそれは過去のこと、すでに失われていると考えている。そして暗い工業都市から再び聖地エルサレムをこのイギリスに取り戻すために、闘おうとしている。とくに精神的な戦いを行うと叫んでいる。

これはグレッグ・レイクが歌っていることからの印象も大きいが、1969年にキング・クリムゾンが「クリムゾン・キングの宮殿」の「21世紀のスキッツォイドマン」などから伺える、現実世界への幻滅につながるイメージである。後にクリムゾンが「Starless and Bible Black」と言った、当時の若者の時代認識、時代への絶望感に近いのかもしれない。

しかし、この歌詞はその暗い悪魔のような工場が立ち並ぶ現実に戦いを挑もうとしている。それは常にオルガンやシンセサイザーと“格闘”しながら、驚異的な演奏を3人だけで繰り広げてきたバンドのイメージにつながる。実際キース・エマーソンのプレイは、高度な技術を美しく聞かせるというよりは、高度な技術を屈指して、何か普通の人間にはどうすることもできない扉をこじ開けようと、全身全霊で格闘しているかのように見えるのだ。

美しいメロディー、パイプオルガンのようなキースのオルガン、ティンパニーまで使用しドラマチックに盛り上がるカールのドラム&パーカッション。非常に勇ましい曲である。まさに幕開けにふさわしい曲。

そして格闘は2曲目から始まるのだ。


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