2009年4月14日火曜日

「ミュージカル・ボックス」ジェネシス

原題:The Musical Box

■「怪奇骨董音楽箱」(Nursery Cryme)より







ぼくに「老いたコール王」を聴かせて
そうしたら
ぼくだってあなたたちの仲間になれるかも
みんなの心は今
ぼくからとっても離れているように思えるんだ
今はたいしたことではないみたいだけど

乳母はあなたたちに嘘を言うよ
空のかなたにある王国のことを
でも、
ぼくはこの半分の世界の中で迷子になってるの
今は
たいしたことではないみたいだけど

ぼくの歌をうたって
その歌がまた流れるんだ

 ぼくの歌をうたって
その歌がまた流れるんだ

ほんの少しだけ、もう少しだけ
ぼくが好きにしていられる時間がある

 ぼくの歌をうたって
その歌がまた流れるんだ
 ぼくの歌をうたって
その歌がまた流れるんだ

老いたコール王は陽気なおじいちゃんだった
陽気なおじいちゃんと言えば彼のことだった
彼はパイプが欲しいと言ったり
お椀が欲しいと言ったり
フィドル奏者を3人欲しいと言ったりした

そして時計、カチカチ音をたてる時計

 あのマントルピース(炉棚)の上にあるやつ
ぼくは望んでいる
ぼくは感じている
ぼくは知っている
ぼくは触っている
その壁を

彼女は淑女で 時間はたくさんあるの
ブラシで髪を掻き揚げて そして
ぼく
あなたの顔がわかるようにして
彼女は
淑女で そして僕のもの
 ブラシで髪を掻き揚げて そしてぼく
 あなたの身体がわかるようにして

ぼくはずっとここで待ち続けているの
時間は
ぼくを通り過ぎていくだけ
今はもう
たいしたことではないみたいだけれど
あなたはそこにしっかりした姿で立っている

そしてぼくが言わなきゃいけないことを全部疑っている
どうして
ぼくに触れてくれないの、触れてくれないの?
どうしてぼくに触れてくれないの、触れてくれないの?
ぼくに触れて、今 今 今 今 今…


オルゴール

年下のヘンリー・ハミルトン・スマイス(8歳)はシンシア・ジェーン・デ・ブレイズ-ウイリアム(9歳)とクロッケーをして遊んでいるところだった。愛らしい笑顔のシンシアは、打球づちを高く振り上げ、優雅にヘンリーの首を叩き飛ばした。二週間後、ヘンリーの子供部屋で、彼女は彼が大切にしていたオルゴールを見つけた。彼女は一生懸命になってその箱を開けるたところ、「老いたコール王」の曲が流れるとともに小さな幽霊の姿が現れた。ヘンリーが戻ってきたのだ - でもそれほど長
い間ではなかった。というのは部屋の中に立っていると、彼のからだはみるみるうちに歳を取り始めたのだ、子供の心だけ内に残して。一生の間ののさまざまな望み事が、次々と波のように彼を通り過ぎていった。彼はシンシアに、彼のロマンティックな望みを果たさせようとしたのだが、残念なことに彼の乳母が何の物音がするのかと子供部屋にやって来てしまった。本能的に彼女はそのオルゴールをヒゲの生えた子供に投げつけると、どちらも粉々になってしまった。


Play me "Old King Cole"
That I may join with you,

All your hearts now seem so far from me

It hardly seems to matter now.


And the nurse will tell you lies

Of a Kingdom beyond the skies.

But I'm lost within this half-world,

It hardly seems to matter now.


Play me my song,

  Here it comes again.
  Play me my song,
  Here it comes again.

Just a little bit,
Just a little bit more time,
Time left to live out my life.


  Play me my song,
  Here it comes again.
  Play me my song,
  Here it comes again.

  Old King Cole was a merry old soul,
  And a merry old soul was he.
  So he called for his pipe,
  And he called for his bowl,
And he called for his fiddlers three.

  And the clock, tick tock,
  On the mantlepiece,
And I want,
And I feel,
  And I know,
  And I touch,
  The wall.

  She's a lady, she's got time.
Brush back you hair, and let me
  Get to know your face.
  She's a lady, she's mine.
  Brush back you hair, and let me
  Get to know your flesh.

I've been waiting here so long
And all this time has passed me by.

It doesn't seem to matter now.

You stand there with your fixed expression
Casting doubt on all I have to say
Why don't you touch me, touch me?
Why don't you touch me, touch me?

Touch me now, now now, now, now ...


The musical box:
While Henry Hamilton-Smythe minor (8) was playing croquet with Cynthia Jane De Blaise-William (9), sweet smiling Cynthia raised her mallet high and gracefully removed Henry's head. Two weeks later, in Henry's nursery, she discovered his treasured musical box. Eagerly she opened it and as "Old King Cole" began to play, a small spirit-figure appeared. Henry had returned - but not for long, for as he stood in the room his body began ageing rapidly, leaving a child's mind inside. A lifetime's desires surged through him. Unfortunately the attempt to persuade Cynthia Jane to fulfill his romantic desire led his nurse to the nursery to investigate the noise. Instinctively she hurled the musical box at the bearded child, destroying both.


 
【メモ】
プログレッシヴ・ロックバンドとしてのGenesisを代表する1971年の作品。アルバムタイトルの「Nursery Crymes」は、「Nursery Rhyme(童謡、子守唄)」と、「Crime(犯罪)」と「Cry(叫び)」のイメージが重なる造語。“本当は恐ろしいグリム童話”とか“本当は恐ろしいマザーグース”みたいに、一聴すると童謡の持つ無垢で無意味な歌詞にも、実は恐ろしい意味が込められていた、というような不気味なタイトル。もちろんそれはこの「The Musical Box」とジャケットに色濃く表現されているわけだ。

まず歌われる歌詞とは別に「The Music Box」という短いお話がこの曲には付いている。「Lyric Wiki」にこの曲の歌詞の背景に関する詳細な説明があるが、この「The Musical Box」というビクトリア時代の妖精物語(Victorian Fairy Tale)曲に出てくるNursery Rhymeの一部らしい。昔話や童謡に見られるような唐突な話の展開、それも不気味な幽霊潭でもある。

歌詞はこのこの物語としての「The Music Box」を踏まえて、クローケーの木づちで頭を飛ばされてしまったヘンリーが語る形式を取っていると思われる。ちなみにクローケー(croquet)は、木槌で木球をたたき, 逆 U 字形の一連の鉄門をくぐらせる芝生での競技のこと。

そして「Old King Cole(老いたコール王)は、Nursery Rhymeにも出てくる人物。古代ケルト民族の王がモデルと言われる。音楽好きで陽気らしい。

そこで「僕」はその「Old King Cole」の出てくる歌を歌ってと願う。仲間としていっしょにいたいのだ。心が離れているのは気づいている。でももうこの世の存在ではないことには気づいていない。

「空のかなたにある王国」とは「天国」のことか。乳母はヘンリーが天国に言ったというだろう、でもそれはウソ、だって僕はこの半分の世界、つまり現世と天国の間にいるのだから。でも僕の歌を歌って欲しい。僕の好きな「Old King Cole」の歌を。

「老いたコール王は陽気なおじいちゃんだった」で始まる連はその「Old King Cole」の歌だろうか。「そして時計」で始まる連では、現実感に乏しい「僕」が自分の感覚を確認しているかのようだ。

その後に出てくる「彼女」はシンシアのことだろうか。とすれば、この歌は、シンシアがヘンリーのオルゴールを開けた時に現れたヘンリーの亡霊が、シンシアに向って言っている言葉だろう。「彼女」のことを「僕」は「僕のもの」と言っている。髪をかきあげて顔と姿を見せてと言っているのは、「あなたがシンシアでしょ」と確認しようとしているのか。

そして僕の言うことを疑っていることを悲しみ、最後に僕に触れてくれることを嘆願する。しつこくしつこく迫ってくる。恐いぞ〜。

ピーター・ゲイブリエルのボーカルの表現力が素晴らしい。しかしそれをサポートするバックの演奏も緻密。フルート、ギターが美しい。中間部でインストゥルメンタルパートがダイナミックな盛り上がりを見せる。叫び声のように切り込んでくるギターが凄い。

物語の内容を知らないと情景が掴みにくい歌詞ではあるが、曲単体で聴いても、ハードな演奏の魅力的なアンサンブルとともに、「僕」の気持ちを歌う緩急豊かなボーカルが「僕」の悲しみを伝えてくる。

ジェネシスが、歌詞とサウンド共に独自の魅力を生み出した名曲だ。


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