2009年4月12日日曜日

「ヴォイシィズ」ドゥルイド

原題:Voices

■「
Toward the Sun」(太陽に向って)収録









僕らは今でも夢を信じているのかな
朝がやってきて
太陽が昼間の大地を照らしているけれど
そして僕らの証人となる
夜の影たちは
百万もの鳥たちの歌の響きの中へと引きこもり
僕に長い夜の物語を
語っているけれど?

僕らが目を覚ました時
僕らは一緒にいたものたちから
忘れられてしまうんじゃない?
そんな気がするな
彼らはただ僕らがいたらいいなと思っていただけじゃない?
僕らはどっちが夢なのかわかるかな?
百万もの鳥たちの歌が響き渡り
僕に長い夜の物語を
語っている

僕らが動き出すのなら、一番近い虹に向って動き出す
僕らが旅するのなら、世界の果てを目指して行く
僕らが見つけるものは 夜になってもなくならない僕らだけのもの
でも夜明けが何が真実で何が見せかけなのかを決めるんだ
百万の人の声が歌いながら
僕に長い夜の物語を
語っている

Do we still believe our dreams
In the morning

As the sun shines day upon the ground

As the shadows of the night that are

Our witness

Are retreating to the sound

Of a million bird songs ringing,

Telling the story to me,
Of long nights' dreams?


When we wake

Do we find ourselves forgotten
By the ones we were with?
So it seems
Are they really there,
Or are they just our hoping?
Do we know which is the dream?
There's a million bird songs ringing,
Telling the story, to me,
Of long nights' dreams

As we move, we move towards the nearest rainbow.
As we journey, we're reaching for the end.
What we find is ours to keep in the night-time.

But dawn decides what's real and what's pretend.

There's a million voices singing,
Telling the story to me,

Of long nights' dream.



【解説】
古代ケルト民族においては、宗教の祭司(僧、予言者、詩人、裁判官、妖術者などを兼ねた)のことをdruid(ドゥルイド)と呼んだ。それをバンド名としたDruidは、イギリスのメロディー・メーカー紙主催のバンド・コンテストで優勝し、レコードデビューしたという経歴を持つ。この時のバンド編成はギター、ベース、ドラムスのトリオだったが、レコードデビューを前に、キーボードを加えた4人編成へと変わった。

トリオ時代からプロデビューするに際して、サウンド的にどれほど変わったかはわからないが、ハイトーンやファルセットを活かした美しいボーカル、その歌い方、硬質なリッケンバッカーのベースなどからは明らかにYesの影響が見て取れる。

しかしボーカルのドリーミーな声やフォークタッチの優しい曲調は、Yesの緊張感あふれる攻撃的なサウンドとは明らかに異なり、キーボードの加入で、バンドの夢見るような柔らかなサウンドが、さらに引き出せたのではないかと思う。

この「ヴォイシィズ」は1975年のデビューアルバム「Toward The Sun」の冒頭の曲。夜の僕たちと夜が明けた今の僕たちは、夜の間の夢を信じていいのかな、それとも夢は夜の終わりとともに消えてしまったのかな、という「僕」の気持ちを歌った曲である。

夜見ていた夢のような時間や想いは「僕ら(we)」が体験したことである。しかし朝が来て「僕」は不安になる。第1連と第2連はその不安が強いかのように相手に語りかける。
百万の鳥の歌声が響く中で、夜の物語が語られているのは「僕たち」ではなく「僕」。ここがこの歌詞のポイントだろう。

つまり「僕」は信じているのである。「僕たち」が夜一緒に見た夢のことを。不安なのは一緒にいたあなた(恋人か)が、その夢を「僕」と同じように、夜が明けた今も信じてくれているか、なのだ。

第3連は「僕」はもう語りかけるのをやめている。夜の夢だけでなく、昼間二人が共に進んでいくことを力強く言い切っている。「夜明けが真実と見せかけを区別する」というところまで言っている。つまり夜の夢に向って夜が明けても二人が進んで行ければいいのだ。

この最後の連だけ、「bird songs」ではなく「voices」になっている。それは自分の声かもしれない。鳥たちのさえずりの中に思い出していた夜の夢を、少なくとも「声」として、よりはっきりと聞いている「僕」がいる。

不安の中から、自信を持って進み出そうとする「僕」の様子が最後に描かれることで、希望に満ちた曲となった。おそらく「僕」の不安なんてただの杞憂なのだろう。でも行動を起こすことには勇気がいる。まして二人の未来のことであれば、相手の気持ちがどうかも大切なことだ。この曲は「僕」が迷いを吹っ切って二人で前へ進む決断をする瞬間を描いた詞と言えるだろう。

とても美しいハーモニーが印象的で、歌詞も演奏も初々しさの残る暖かい曲である。

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