2009年4月11日土曜日

「不思議なお話を」イエス

原題:Wonderous Stories

■「Going For The One」(究極)収録








わたしは今朝目覚めた

愛の神が川の近くにわたしを寝かせていた
わたしは川の上流を目指してゆっくり泳いだ
わたしに許しを与えてくれる人を目指して
あなたの顔を見るわたしの眼差しに託されたものの中の
音がわたしを黙らせた
なんの痕跡も残さずに
わたしは許しを請うた 不思議なお話を聞かせて欲しいと
その不思議なお話を聞かせて欲しいと請うたのだ

彼はそれほど遠くない土地のことを話した
彼の心の中にある土地ではなかった
そこでは高次元で融合が達成され
理性が彼の時間を捕らえたのだ
ほんの一瞬で 彼はわたしを門まで連れて行った
慌ててわたしはすぐに
時間を確認した
もし遅れたら、あなたの不思議なお話を聞くのに 許しを請わねばならなかった
あたなたの不思議なお話を聞くのに 許しを請わねばならなかったのだ

耳をすます
 耳をすます あなたの不思議なお話に耳をすます
 あなたの不思議なお話に耳をすます
嘘ではなくわたしには未来がしっかりと見える
全てを心に描く
あなたは近くにいた
そこはあなたがそれまでいた場所
最初に注意深く立っていた場所
するととても高く
彼が言葉を発するとわたしの魂は空へと駆け上った
わたしは魂に戻ってくるように命じた
あなたの不思議なお話を聞くために
戻って来てあなたの不思議なお話を聞くために
 戻って来てあなたの不思議なお話を聞くために

耳をすます
 耳をすます
  耳をすます
   耳をすます

I awoke this morning Love laid me down by the river
Drifting I turned on up stream
Bound for my forgiver In the giving of my eyes to see your face
Sound did silence me
Leaving no trace
I beg to leave, to hear your wonderous stories
Beg to hear your wonderous stories 'LA AHA LA AHA'

He spoke of lands not far Nor lands they were in his mind
Of fusion captured high Where reason captured his time
In no time at all he took me to the gate In haste I quickly
Checked the time If I was late I had to leave, to hear your wonderous stories
Had to hear your wonderous stories 'LA AHA, LA AHA'

Hearing
 Hearing hearing your wonderous stories
 Hearing your wonderous stories It is no lie I see deeply into the future
Imagine everything
You're close And were you there To stand so cautiously at first And then so high
As he spoke my spirit climbed into the sky
I bid it to return
To hear your wonderous stories
Return to hear your wonderous stories
 Return to hear your wonderous stories
LA AH LA AH AH AH
 Hearing
  Hearing
   Hearing
    Hearing
     Hearing

【解説】
1977年発表、スタジオアルバムとしては「リレイヤー(Relayer)」に続く、第8作目にあたる作品。前々作の「海洋地形学の物語(Tales From Topographic Oceans)」発表後バンドを脱退したキーボードのリック・ウェイクマンが復帰し、アルバムジェケットもYesのロゴを残してロジャー・ディーンの幻想的絵画からヒプノシスの都会的イメージに変わった、心機一転の心意気を感じる作品。

「不思議なお話を」は、ジョン・アンダーソンが歌う牧歌的な曲で、旧アルバム構成上は、A面の最後が「パラレルは宝(Parallels)」のチャーチ・オルガンが鳴り響く派手な曲で終わったところで一息、B面に裏返して、再びラストの大作「悟りの境地(Awaken)」で盛り上がる前の小曲といった趣き。

正直なところ私的にはこの「究極(Going For The One)」は「リレイヤー」を聴いた後では物足りない。タイトル曲「究極」は素晴らしいと思うが、「パレレルは宝」はリックウェイクマンの時代がかったチャーチ・オルガンが曲のスマートさ、タイトさを損ねている感じがするし、「悟りの境地」は、前半の驚異的な緊張感が中盤以降途切れてしまい、「クライマックスは最初だったのか」といった消化不良を起こす。

したがって、むしろ大仰な演出を控えたフォークタッチな「不思議なお話を」が、思わず鼻歌を歌ってしまうように心に残るのである。実際、この曲はイギリスでシングル・カットされレコード・ミラー誌のチャートで7位を記録するヒットとなった。

そこで歌詞を見てよう。
まずタイトルの「Wonderous Stories」だが、「wonderous」という綴りは一般的ではない。正確には「wondrous(驚くべき、不思議な)」と書く。「wonder(驚異、不思議な物事)」という単語のイメージを残すために、わざとあまり一般的ではない「wonderous」を使ったのかもしれない。意味は同じ「不思議な」とか「驚くべき」など。

まず作詞をしたジョン・アンダーソンの言葉から。

「素晴らしく天気のいいスイスの1日だった。ずっと心に残るような最高の日和だった。そのとき“不思議なお話を”の歌詞を思いついたんだ。生き生きとした歌だよ。  張りつめた人生ではなく、人生の喜びを歌ったものなんだ。過去や未来のロマンチックなお話で、何と言うか、夢の続きのような感じなんだ。」
「イエス・ストーリー」(ティム・モーズ著、シンコー・ミュージック、1998年)より

相変わらず難解で解釈を拒むような感覚的な歌詞である。しかし上記のジョンの言葉を頼りに、プラス思考で流れを捉えていったみよう。

「わたし」は目覚めると川の近くに寝かされていた。「Love」によってとあるが、この後「愛する人」の話は出てこないので、もっと広い愛を持つ存在、愛の力で包み込んでくれるような存在と考えた。そこで「愛の神」と訳してみた。具体的な神話上の存在ではない。この愛の神が、わたしを「forgiver(許しを与えてくれる人)」へと続く川に連れて来てくれたのだ。

「forgiver」も、「神」と呼んでしまうと語弊があるかもしれない。特定の宗教の神を言っているわけではないのだ。「神のような、絶対的な力と慈悲の心を持つ超越的な存在」という感じか。「forgiver」という言葉もいい言葉である。人は基本的に不安で一杯なのだ。許し、受け入れて欲しいのだ。だから「わたし」は「forgiver」を目指して川を上流へと移動する。そして「forgiver=you」の顔を見ると、「音がわたしを黙らせた 何の痕跡も残さずに」、つまり「わたしは何も話すことができず、そこには何の音もしない静寂のみ存在した」ということか。

しかし「わたし」は請う
。不思議なお話を聞かせて欲しいと。「beg leave to do...(〜する許しを請う)」という表現があり「leave(許可)」という名詞として使われているが、ここでは本来はない「leave(許可する)」という動詞と捉え、「beg to leave =beg leave」(許可を請う)と訳した。「leave(去る、残す)」という意味の動詞ならあるんだけど、話がつながらないので、上の案を採用した。

第2連では、それまで「あなた」と言っていた相手が「彼」で始まっている。少し客観的な表現に変わる。「彼」は
それほど遠くない土地の話をし、時間を自由にあやつり、わたしをその「高次元で融合された土地」の門まで一瞬にして連れて行った。あなたの不思議なお話でわたしは時空を超え、過去の理想郷の門まで行ったということか。

しかしそのまま呆然としているわけにはいかない。「わたし」は「あなた」の話を聞きたいのだ。「あなた」の不思議なお話についていかなければならないのだ。

そして今度は「あなた」のお話を聞くうちに未来が手に取るように見えるようになる。

再び気づくと「あなた」は最初に立っていた場所にそのまま立っていた。時空の旅は一瞬のできごとなのだ。

また「あなた」のお話に耳を傾けると、魂が空へと駆け上ってしまった。わたしはその魂を呼び戻す。あなたの不思議なお話を聞き続けるために。

こうして「わたし」は、「あなた」の不思議なお話を聞くことでコントロール不能になりそうなほどに時空を行き来する。そして未来をも見ることができた。だけどまだまだ「わたし」は「あなた」の不思議なお話を聞きたい。その話を聞くことが自分の心の解放になるからだろう。
宗教的な色彩の強い寓話風であるが、物語と言えるほどの筋はない、とても感覚的な内容だ。

曲はゆったりした雰囲気で、ボーカルそしてボーカルハーモニー
美しく優しい。中間部の華麗なポリフォニックシンセサイザーの音がクラシカルなタッチを加える。確かにドリーミーである。アコースティックギターがリズムを刻み続け、平和なムードの中で曲は終わる。

聖歌のような、超自然的な至福の体験が持つイメージの神秘さと、それに説得力を持たせてしまうジョンの声を中心としたYesのクラシカルなアレンジが作り出した傑作と言える一曲。

理詰めで解釈することを拒むところが、Yesの詩の良さでもあり難しさでもあると、またまた実感した。


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