2009年3月13日金曜日

「君の心に」キャメル


原題:TELL ME

RAIN DANCES(雨のシルエット)」収録







おしえておくれ すべてを
気持ちを表すことを恐れないで
時々 その方が楽になる
君の恐れも 溶けて消えるよ
そしてすべてを月の光へと変化させるんだ
韻を踏む言葉へと
これからもずっと心の中に
これからもずっと心の中に

何でもいいから奏でておくれ
たぶん音楽が 僕に君がどんな気持ちかを伝えるための
ただ一つの方法
どうにかして 君はその方法を見つけるだろう
そして君の曲の中のすべての言葉は消えることはない
これからもずっと心の中に
これからもずっと心の中に



Tell me everything
Don't be afraid to give yourself away
Sometimes, it's easier
Your fears melt away
And turn it all to moonshine
Words that rhyme
Still in your mind
Still in your mind

Play me anything
Maybe music is the only way
to tell me how you feel
Somehow, you'll find the way
And all the words to your song
Will carry on
Still in your mind
Still in your mind

【解説】
「Rain Dances」は、Camelのオリジナルメンバーだったダグ・ファーガソン(Doug Ferguson)が前作の「Moonmadness」を最後に脱退し、新たに元Caravanのリチャード・シンクレア(Richard Sincrair)がボーカル&ベースで加入、さらにゲストではあるがサックス、フルート、クラリネットで全面的にメル・コリンズ(Mel Collins)の協力を得て作り上げた作品。

初期のCamelはギターのアンディ・ラティマー(Andrew Latimer)が今程積極的に歌っておらず、曲によってアンディ、キーボードのピーター・バーデンス(Peter Bardens)、ベースのダグ・ファーガソンが交替でボーカルを取っていた。つまりボーカル面で弱さがあった。だからこそそれを逆手に取って全曲インストゥルメンタルの傑作「Snowgoose」が作られたとも言えるのだが。

しかしリチャード・シンクレアの加入でボーカルが安定し、ボーカル曲が増えボーカルの魅力のある曲が作れるようになった。ボーカルハーモニーも充実する。その分インストゥルメンタル・パートが後退し、全体としてポップだけれども落ち着いたアルバムとなった。

リチャード・シンクレアやメル・コリンズの活躍はカンタベリー的ジャズ感覚を持ち込むが、アンディ・ラティマーとピーター・バーデンスの強力オリジナルコンビが、決してカタンタベリー色に染まらず、Camelらしさを失うことなく、巧みに新しいCamelとして結実させた作品。

そして傑作「Tell me(君の心に)」が生まれる。エレクトリックピアノとイフェクターのかかったフレットレスベースをバックに、リチャード・シンクレアによって静かに歌われる、優しく、心に染入るような曲だ。中間部のフルート、キーボードも美しい。

穏やかに、気持ちを表現することの大切さ、そして音楽の持つ力を伝えようとした歌だ。思いを言葉に、そして曲にして、「僕」に君の気持ちを伝えておくれとささやく。美しい言葉になった君の気持ちは、いつまでも君の心に残る。静かに静かに前に進む勇気と、こころの安らぎを与えてくれる歌詞である。

「sometimes(時々)」、「maybe(たぶん)」、「somehow(どうにかして)」と、あいまいな表現が多く使われているが、無責任なわけではなく、むしろ押し付けがましくならないように気を遣っているような印象を受ける。それは紳士然としたリチャード・シンクレアのボーカルと、夢見るような曲調によるものだろう。

短くシンプルな曲だけれど名曲だ。そして大好きな一曲。


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