原題:「The Logical Song」
■「Breakfast in America」
(ブレックファスト・イン・アメリカ)収録
まだ僕が小さかった頃
人生はとてもすばらしく見えた
一つの奇跡のようで、あぁ、美しく、魅力的だった
そして木々の鳥たち
そうさみんなとても幸せそうに歌い続けていたようだった
あぁ喜びに満ちて、僕を見て、はしゃいでいるようだった
しかしその後彼らは僕を遠くへ行かせ僕に教えようとしたんだ
分別のある人間にはどうすればなれるかって
論理的で、そう、責任感があって、現実的な人間にね
そして彼らは世界というものを見せてくれた
信頼され、客観的で、理知的で、冷笑的になるべき世界をね
世界中が眠りについた時のことさ
こんな単純な人間に
とても根深い疑問が沸き上がる
どうかお願い、お願いだから僕らは何を学んできたのか教えて
ばかげたことのように思えるのはわかってる
でも僕はいったい誰なのか教えて
あのね言葉には注意した方がいいよ
さもないとみんな君を過激だとか、
進歩的だとか、狂信的だとか、罪を犯してるとか言い出す
あぁちょっと名前を書いてくれないかい
私たちはこう思いたいんだ 君が受け入れられる人物で
立派な人物で、見苦しくなく、活気のない人物だって
世界中が眠りについた時のことさ
こんな単純な人間に
とても根深い疑問が沸き上がる
どうかお願い、お願いだから僕らは何を学んできたのか教えて
ばかげたことのように思えるのはわかってる
でも僕はいったい誰なのか教えて
When I was young
It seemed that life was so wonderful
A miracle, oh it was beautiful, magical
And all the birds in the trees
Well they'd be singing so happily
Oh joyfully, oh playfully watching me
But then they sent me away
To teach me how to be sensible
Logical, oh responsible, practical
And then they showed me a world
Where I could be so dependable
Oh clinical, oh intellectual, cynical
There are times when all the world's asleep
The questions run too deep
For such a simple man
Won't you please, please tell me what we've learned
I know it sounds absurd
Please tell me who I am
I say now watch what you say
Or they'll be calling you a radical
A liberal, oh fanatical, criminal
Oh won't you sign up your name
We'd like to feel you're acceptable
Respectable, oh presentable, a vegetable
But at night when all the world's asleep
The questions run so deep
For such a simple man
Won't you please, please tell me what we've learned
I know it sounds absurd
But please tell me who I am,
who I am, who I am, who I am
【解説】
イギリスのバンド、スーパートランプが、その独特のポップさを全面に出すことでアメリカで大成功をおさめることになったアルバム「Breakfast In America/ブレックファスト・イン・アメリカ」(1979年)からの一曲。アメリカのみならず日本でもシングルヒットした曲である。
もともと“ミクスチャー・ロック”ならぬ“ミクスチャー・ポップ”とでもいうような、ジャズやプログレッシヴ・ロックなどの様々な面が自然に溶け込んだ不思議な魅力を持ったバンドだったが、曲自体は声が高く線の細いロジャー・ホジソン(Roger Hodgson)のボーカルを全面に出したことでバンドの個性が明確になり、もともとのメロディーセンスも活かされてアメリカでの成功につながったと言える。この「The Logical Song」もロジャーがボーカルをとり、歌詞の内容と彼の頼り無さげな声質が抜群なコンビネーションで曲の魅力を高めている。リズムが刻まれるエレクトリック・ピアノ、中間部のサックス、電話の音のSEなど、短いながらも非常に練られた密度の濃い曲である。
歌詞の内容は、幼いときのキラキラと輝きを放っていた魅力あふれるこの世界が、「彼ら」、つまり親や教師などの大人達に「勉強」させられ、この世界で一人前の大人にされていくことに対して、心の奥底に深く根ざしている疑問、疑念、そして「Please tell me who I am」という、自分自身を失う姿が歌われている。
第4連のみ「彼ら」からの視点で語られていると思われる部分が、結局現実なのだ。「The Crime Of The Century」の「School」に出てきた「Don't criticize(批判しちゃダメ)」と言われる「きみ」の様子がオーバーラップする。
ポップになったとは言うが、本質的に大きく変わってはおらず、最後の「Child Of Vision」など、後半部にプログレッシヴ・ロック風味が色濃く残っているあたりが、このアルバムの奥の深さでもある。
なお、スーパートランプという名前は、20世紀初頭のイギリス、ウェールズ出身の放浪の詩人W.H.デイヴィスが、1910年に出版した小説「The Autobiography Of Supertramp(素晴らしき放浪者の自叙伝)」から取られたもので、自身の自伝的内容らしい。trampとは「放浪者」という意味だ。
原題:「School」
■「Crime of the Century
(クライム・オブ・ザ・センチュリー)」収録
朝きみが見える 学校へ行くときだ
教科書を忘れちゃだめよ 行動規範を学必要があるのわかってるでしょ
先生はみんなに遊ぶのは止めて 課題をどんどん進めるようにと言う
とっても良い子のジョニーみたいになりなさい 彼は決して嫌がらないわ
- 彼は順調に進んでいるわ!
学校が終わると きみは公園で遊ぶ
遅くなりすぎないでね 暗くなる前に帰るのよ
皆はきみに ふらふらしてないで人生について学ぶんだと言う
そして私たちのような大人になりなさいって - うまくやっていきたいだろって
- そしてきみは不信感でいっぱいになる
これをしちゃダメ あれをしちゃダメ
皆どうしようとしてるんだ?
- 良い子になりなさい
皆は大事なことが何なのか知っているのかな?
文句を言ってはダメよ、皆歳をとっていて賢いの
皆が言う通りにしなさい
悪魔がやって来て、両目を持っていかれたくないでしょ?
たぶんぼくが きみが闘えばいいと思うのは間違いなんだろう
あるいはぼくの頭がおかしいのか 良い悪いの区別がつかないんだ
でもぼくは今でも生きていて このことだけは言いたいんだ
きみはそうしたいなら
きみがそれを見たいなら
きみがそうやって思いたいのなら
それはいつだってきみの自由だよ
- きみはうまくやっているのさ!
I can see you in the morning when you go to school
Don't forget your books, you know you've got to learn the golden rule,
Teacher tells you stop your play and get on with your work
And be like Johnnie - too-good, well don't you know he never shirks
- he's coming along!
After School is over you're playing in the park
Don't be out too late, don't let it get too dark
They tell you not to hang around and learn what life's about
And grow up just like them - won't you let it work it out
- and you're full of doubt
Don't do this and don't do that
What are they trying to do?
- Make a good boy of you
Do they know where it's at?
Don't criticize, they're old and wise
Do as they tell you to
Don't want the devil to
Come and put out your eyes
Maybe I'm mistaken expecting you to fight
Or maybe I'm just crazy, I don't know wrong from right
But while I am still living, I've just got this to say
It's always up to you if you want to be that
want to see that
want to see that way
- you're coming along!
【解説】
ツインボーカル、ツインキーボードを特徴とするイギリスのバンド、スーパートランプ(Supertramp)の1974年の作品「Crime Of The Century」の最初の曲である。高音で繊細なロジャー・ホジソン(Roger Hodgson)と低音でちょっとユルい感じのリック・デイヴィス(Rick Davis)という、それぞれの個性あるボーカルが魅力。
プログレッシヴ・ロックに括るには、ポップな曲が並ぶ。しかし演奏面でも内容的には充実している。最後のアルバムタイトル曲は、後半ピアノのドラマティックな響きにサックスソロが入る感動的な曲。
この「School」はロジャーが歌っている。ノリがよいリズムにポップでメランコリックなメロディー、そしてハーモニカソロで始まりSEが入り、曲間の演奏にも奥行きのある曲構成。やはり一筋縄では行かない、作り込まれている一曲。
この歌詞には「I」(わたし)の視点で、学校へ通う「you」(きみ)を述べた文、「you」が周りの大人、あるいは先生たち「they」(彼ら)から言われている言葉(あるいはお小言)、そして家で親から言われている言葉の3種類の文が混ざっている。そうした視点の変化が、簡潔な表現と臨場感を生んでいる。
例えば第1連の1行目は、第三者としての「I」が「you」を見て述べているが、2行目の命令文はは親が「you」に言っている言葉、4行目は3行目に出てくる先生が言っている命令文。ちなみにJohnnie-too-goodはロックンロールの名曲「Johnny B. Goode」のシャレかな。Johnny B.Goodeは人名だけど、ここでは「良すぎるくらいいい子のジョニー」みたいになれ(be like〜)と言っている。
「I」と「you」の関係はわからない。でも「I」は、「you」が親や先生から、言われたことは無批判に受け入れるようにと言われていること、そして「you」が「full of doubt」(不信感で一杯になっている)ことを知っている。だから、言われたことに従ってばかりいないで、闘うんだと本当は言いたい。でも自分でもよくわからない。ただ悪魔に両目を引っこ抜かれたりせずに、まだ生きている大人として、これでけは言っておきたいと言う。どうするかは結局「it's always up to you」(いつだって君が決めること)なんだよと。
闘えと命ずることは、結局言うことを聞けと命ずる大人と同じ。押しつけでしかない。「I」はたぶんそれがわかっている。生きることはそんなに単純じゃないこともわかっている。その控えめさというか、正直さが「you」を見つめる優しさとして現れている気がする。
不思議な魅力を持った曲。というかSupertramp自体が不思議な魅力を持ったバンド。「Breakfast In America」が後に大ヒットするけれど、不思議な魅力はこのアルバムの方が上でしょう。