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2010年7月18日日曜日

「風の唄」セバスチャン・ハーディー

原題:Windchase / Sebastian Hardie








「愛の疾風」

愛の疾風
愛の疾風
愛の疾風
あなたの心に寄り添っておくれ
愛の疾風
あなたの心を寄り添っておくれ
 
日々があなたを落ち込ませませんように
周りを見回せば道はあるものだよ
立ち上がるために、決して落ち込まないで
道を見つけるんだ、周りを見回すんだ
愛の疾風
愛の疾風
苦しみに耐えることはもう決して辛いことではない
僕はあなたの愛を僕の心に感じている
あなたの目が僕に近づく時
僕はいつだって自由なんだということがわかるんだ
日々や年月が過ぎ去るにつれ
僕らはしばしば泣くこともあるだろう
でも僕らが離れていても一緒にいても
僕らの愛は変わることはないんだよ

苦しみに耐えることはもう決して辛いことで はない
僕はあなたの愛を僕の心に感じている
あなたの目が僕に近づく時
僕はいつだって自由なんだということがわか るんだ

The windchase of love
The windchase of love
The windchase of love
Follow your heart
The windchase of love
Follow your heart

Don't let days get you down
There are ways if you look around
To get up, don't get down
Find a way, look around

The windchase of love
The windchase of love

No longer hard to carry on
I feel your love is in my heart
And when your eyes close next to me
 I know I'm always feeling free

And as the days and years go by
I know that we will often cry
When we're apart or we're together
Our love will be always

No longer hard to carry on
I feel your love is in my heart
And when your eyes close next to me
 I know I'm always feeling free

【メモ】
オーストラリアの伝説的プログレッシヴ・ロック・バンド、セバスチャン・ハーディーの名作1stアルバム「フォー・モーメンツ(哀愁の南十字星)/Four Moments」に次ぐ、1976年のこれまた名作2ndアルバム「風の唄/Windchase」。その20分に渡るアルバムタイトル曲である。

まずタイトルの「windchase」であるが、これは英単語としては存在しない。セバスチャン・ハーディー、というか作詞のマリオ・ミーロ(Mario Milo)の造語だと思われる。「chase」は「追跡」という意味があるので、「相手(恋人)を追い求める風」のようなイメージか。「追跡」という狩猟にも使われる言葉なので、その素早さから「疾風」と訳をつけてみた。  

さてこの「風の唄」は、1stアルバムのタイトル曲「フォー・モーメンツ」同様に、LP片面を使った大作である。しかし歌詞を比べると、「フォー・モーメンツ」のサイケデリックなイメージを感じさせる抽象的で展開のある詩とは異なる。むしろサウンド同様にゆったりと包み込むような音の美しさに寄り添うような、シンプルでストレートな歌詞である。

歌詞の内容は、「僕」と「あなた」との変わることのない愛を信じて生きていこうとする、力強い自信に満ちたものだ。

「あなたへの愛しき思いよ、風のようにあなたを追いかけ、あなたの心に付いていっておくれ/付き添っておくれ」という、「僕」の「あなた」への強い愛が繰り返し宣言される。それが全てなのだ。

 「Don't let days get you down」は命令文である。「僕」が「日々があなたを落ち込ませないようにしなさい」と言っている。ではそれを命令している相手は誰か。おそらくそれが 「あなたに寄り添っている愛の疾風」であろう。例え「僕」が傍らにいなくても、常にそばにいて愛の力で元気づけるんだと「windchase of love」に思いを託している。

「あなた」の愛を知った「僕」はもう生きていく力と自由を感じている。だからこれから先、悲しいことがあっても、「僕たち」は愛で支え合って生きていくことができる。そばにいてもいなくてもそれは変わらない。

まさに愛の唄である。その分1stにあった抽象的な歌詞ゆえの幻想性やイメージの広がりはなくなったが、20分をかけてこのシンプルな歌うということで、1stにはなかった人間的な温かさを曲世界に加えていると言える。

しかしマリオ・ミーロの声は良い声である。このスケール感豊かな音楽に見事にマッチしている。文字通り愛にあふれた名曲である。


 

2009年2月13日金曜日

「フォー・モーメンツ part I&IV」セバスチャン・ハーディ






 I. 至福の時が来たれり

 今あなたが聞こえるすべての言葉が 
 まるで 何かに目の焦点を合わせたみたいに
 そして両手でほとんど触れるくらいに はっきりし始めたのだけれど
 あなたは理解している
 でもすべて存在するのだろうか?

 引き続いて 聞いているうちに
 後ろから響く新しい音に気づいたのだけれど
 そしてそれらの音は 調子を合わせて心の中に入ってきたのだけれど
 すべては存在するのだろうか?

 今あなたは かつて見たことのないすべての色を見ている
 それら一つ一つの色は さらに多くの色へと爆発的に増えていく
 そしてますますその色を変化させていく
 それは存在しうるのだろうか?

 今あなたは 太陽の熱を顔に感じる
 それは この場所の不思議さを示している光だ
 そして あなたが手を伸ばせば 抱きしめることができると感じる
 すべては真実 すべては真実なのだ

 今あなたは 聞こえてくるすべての音が
 
まるで 何かに目の焦点を合わせたみたいに
 そして両手でほとんど触れるくらいに 実感できるのだけれど

 あなたは理解する すべては存在するのだ

 すべては真実

 一瞬の間 その一瞬があなたをつつみこむだろう
 一瞬の間 その一瞬があなたを傷つけることもあるだろう
 その一瞬一瞬は きっとあなたとともにあるだろう
 私の心からあなたに向けた一瞬


IV. すべては真実

 あなたが聞いたすべての言葉は 
 まるで 何かに目の焦点を合わせたみたいに
 そして両手でほとんど触れるくらいに はっきりし始めたのだったが
 あなたは理解したのだ すべて本当に存在したことを


 I.glories shall be released

 Now as it begins all the words that i hear
 Are clear as if you focus your eyes on something
 Near enough to touch with your hands you understand
 Do the all exist ?
 
 Now as it continues you hear and now you find
 That there are new sounds coming from behind
 And as they all come within and all in time
 Do they all exist ?
 
 Now you see all colour you've never seen before
 They're all exploding from one and into more
 And they keep changing their colour ever more
 Can they all exist ?
 
 Now you feel the heat of the sun upon your face
 It's light reflecting the wonders of this place
 And as you reach out you feel you can embrace
 Everything is real, everything is real...
 
 Now you realize all the sounds that you can hear
 Are clear as if you focus your eyes on something that's
 Near enough to touch with your hands you understand
 Do they all exist
 
 Larararadjarandarãn... everything is real...
 
 For a moment, it will hold you
 For a moment, it will hurt you
 And this moment should stay with you
 This moment from my heart
 
 Iv. everything is real
 
 And as it begun all the words that you heard
 Were clear as if you focused you eyes on something
 Near enough to touch with your hands
 You understood that it did exist
 
 
【解説】
先 に訳した「II. ドーン・オブ・アワー・サン(夜明け)」をIとIVの間に組み込めば、セバスチャン・ハーディ(Sebastian Hardie)の大曲「Four Moments」の全訳となる。ちなみに「III. ジャーニー・スルー・アワー・ドリームズ(夢の旅路)」はインストゥルメンタル。

まずIでは、1連、2連が“As”で始まっていて、「〜のようなのだけれど」と、「あなた」に起こっている出来事を半信半疑で見ているような書き方になっている。だから「こんなものが存在するのか?」と問うている。

ところが3連では最初から「あなたは見ている」と言い切っている。目の前の出来事が実際に起きていることが肯定されている。だから「こんなことが存在しうるのか?」と、より現実的な問いに変わってきている。

さ らに4連、5連で「すべては真実」、「すべては存在する」と断定される。様々な色と音に満ちあふれた光あふれる世界。先に訳したIIで、太陽が去り夜の暗 闇がやって来ても、思い出と夢をいだいているうちに、夜明けがまたやってくると言っていた。それと合わせると、すべてが幸福に満ちあふれた天上界のような 世界を描いたのではなく、現実世界で得られる至福の瞬間の素晴らしさを描いていると言える。あくまで現実世界を歌った詞なのだ。

IIIで はIの1連が、ほぼそのまま過去形となって繰り返される。そして「すべては本当に存在した“did exist”と強調されて、曲は終わる。あり得ないような至福の体験、それは一瞬のできごと。だから一瞬一瞬が重要なのだ。その一瞬一瞬をわたしの心から 届けたいと「私」は思っているのだ。

実はギターのマリオ・ミーロ(Mario Millo)が、あるインタビューで答えている。
「詞 的な意味としては、いくつかの解釈が成り立つと思うんだ。僕としては前向きなとらえ方をしたいと思う。ただ部分的には、ある友だちのことが影響 (“inspire”)している。」その友だちとは昔のバンド仲間で、ドラッグのために目の前の現実と心の中の現実が混乱してしまい、数年後に自殺してし まったという。

その友だちへの個人的な思いまではわからないけど、確かにIの音と色と光の描写はドラッギーな感じがするかな。ただこの「Four Moments」という曲には、傷つける(“hurt”)瞬間があっても、現実世界に至福の時が必ずあることを歌おうとしている。

しかし、何よりも美しさと希望に満ちた感動的な音楽自体が、この曲の前向きさを雄弁に物語っているのではなかろうか。いや、まさにこの至福体験を現実の音にしたものが、このアルバム「Four Moments」なのである。

以上終了。

「フォー・モーメンツ part II 」セバスチャン・ハーディ


原題:Four Moments

「FOUR MOMENTS」
(フォー・モーメンツ/哀愁の南十字星)
収録






 II. 我らの夜明け

 まばゆい太陽が
 われわれに昼の光を与え
 今進むべき道を示している

 温かい太陽が
 雨を降らせ 
 われわれが生きる道を清めてくれる

 時は過ぎ
 太陽はから去り
 消えてしまうだろう
 そして私たちにも夜がやってくるだろう
 
 私たちの心の奥底では 
 思い出が生き続けている
 夢見ることに耽っていれば
 すぐに恐れは去り
 暗闇も去るだろう
 そして夜明けがやってくる

 一瞬の間 その一瞬があなたをつつみこむだろう
 一瞬の間 その一瞬があなたを傷つけることもあるだろう
 その一瞬一瞬は きっとあなたとともにあるだろう
 私の心からあなたに向けた一瞬


 II. dawn of our sun
 
 Chiaro sole
 Gives us our day
 Shows us our way
 We make now
 
 Caldo sole
 Brings us our rain
 Cleanses our way
 We live on
 
 Time moves on
 Our sun will be gone
 Leaving our sky
 Our night time will come
 
 Deep in our minds
 Memories live on
 Lost in our dreams
 Soon fear will be gone
 Darkness will leave
 Dawn of our sun
 
 For a moment, it will hold you
 For a moment, it will hurt you
 And this moment should stay with you
 This moment from my heart

 
【解説】
「Four Moments」(邦題:「哀愁の南十字星」または「フォー・モーメンツ」)は、オーストラリアのバンドであるセバスチャン・ハー ディ(Sebasthian Hardie)が1976年に発表したデビューアルバムである。全編マリオ・ミーオ(Mario Millo)の甘美なギターが歌いまくり、それをトイヴォ・ピルト(Toivo Pilt)のキーボードがみごとにサポートするという、叙情派プログレッシヴ・ロック屈指の名盤である。特にメロトロンの効果的な使い方が、ギターととも に大きな魅力であり特徴となっている。
 
Shura_3アルバム収録曲はタイトル上6曲になっているが、1〜4曲はつながって演奏され、詞的にも関連しているので一つの曲と考えられる。実際最初に発売されたLPの裏面には、「Side 1 Four Moments」とあって、その下に1〜4曲のタイトルが書かれているのだ。つまりLPで言うところのA面の4曲は「Four Moments」というタイトルの20分に渡る組曲なのである。 
 
さてここで取り上げたのは、サウンド的には導入部の盛り上がりがいったん終わり、ゆっくりしたギターアルペジオに導かれてメロトロンフ ルートが歌い出す、一番ドラマチックな2曲目である。メロトロンをバックに前半が、そして感動的なギターソロを経て、最後の4行が歌われる。この4行は組 曲全体でも、何回か繰り返されるので、大きなテーマだと言える。
 
この曲の前にある1曲目は、その雄大な“覚醒”を思わせる詞から、最初は何か宗教的な体験を歌っているような気がした。“you”は聴き手全体に対する呼びかけかと思った。そしてこの2曲目も、太陽や昼と夜を歌った前半部は、その流れを継いでいるように感じた。
 
し かしこの2曲目では、「私たち」“we”を太陽が導き、例え夜になっても、また夜明けがやってくると歌われる。「私たち」は思い出も共有している。同じ夢 も持っている。そして最後、“This moment from my heart”と、「私」が出てくる。「私の心からあなたに向けた一瞬」。ということは“you”は、「あなたたち」と広く呼びかけているのではなく、特定 の「あなた」への呼びかけだと分かる。
 
したがってこれは宗教的な歌ではない。宗教的な崇高な気持ちにまで高まった「私」から「あなた」 への思いを表現した歌なのだ。相手は恋人かもしれない。あるいは男性の友人かもしれない。同じ思い出と夢を持ち、辛い時期(夜)が来てもまた良い時期 (朝)はやってくる。一瞬、一瞬、相手を包み込んだり(hold)傷つけたり(hurt)仕合いながらも、その一瞬一瞬をともに過ごしていこう。その一瞬 一瞬は私の心からあなたのために用意されたもの。
 
そう考えると1曲目では、私たちが一緒にいることで「あなた」の世界がこんなに開けてきているだろう?と歌っているのわけだ。う〜ん、愛にしても友情にしても、この「Four Moments」は、雄大にして崇高なる思いが詰まった曲だったのだ。凄い。
 
ちなみにLP及びCD(私の持っているのは1994年発売盤)では、英詞が間違っているため、訳詞も違っている。Lyrics Spot.comサ イトにあった英詞(これもスペリングミスがあったりしたのだけれど)を参考にさせていただいた。なんと一連、二連の最初の言葉「Chiano sole」と「Caldo sole」はともにイタリア語であった。聴きながら英語っぽくないなぁとは思ってたけど。はぁ〜疲れた。