原題:Close to the Edge
IV. Seasons Of Man / Yes
■Close to the Edge(危機)収録
IV. 人の四季
音符の間の時間が 彩りを情景へと結びつける
勝利することが不変の人気を得ることで人は混乱する そう思える
円錐形焦点の間の空間は 愛を知るという高みへと登り詰める
歌と運命が時を紡ぎ出し 失われていた社会的節度が支配力を増すとともに
そして 空間へと腕を広げて見せている男に従えば
彼は振り返り 指を指した すべての人類が姿を現す
わたしは首を横に振り 微笑んでささやいた その場所をすべて知っていると
丘の上でわたしたちは谷間の静けさを見渡した
循環がすでに過去のものとなったことの証人として
そしてすでに語られた言説の中間で動くことで わたしたちはこれらすべてに触れる
瀬戸際の近く 下の川のそば
下の終局のあたり 角をそばを回り込んだところ
季節はあなたを通り過ぎるだろう
全ては終わり 完了したから
根源たる種子へ そしてまっすぐに太陽へと天命を受け
そしてあなたが発見し あなたが全体となったから
季節はあなたを通り過ぎるだろう
わたしは上昇し わたしは下降する
わたしは上昇し わたしは下降する
わたしは上昇し わたしは下降する
IV Seasons Of Man
The time between the notes relates the color to the scenes
A constant vogue of triumphs dislocate man, so it seems
And space between the focus shape ascend knowledge of love
As song and chance develop time, lost social temperance rules above
Then according to the man who showed his outstretched arm to space
He turned around and pointed, revealing all the human race
I shook my head and smiled a whisper, knowing all about the place
On the hill we viewed the silence of the valley
Called to witness cycles only of the past
And we reach all this with movements in between the said remark
Close to the edge, down by the river
Down at the end, round by the corner
Seasons will pass you by
Now that it's all over and done
Called to the seed, right to the sun
Now that you find, now that you're whole
Seasons will pass you by
I get up, I get down
I get up, I get down
I get up, I get down
【解説】
Yesの「危機(Close to the Edge)」のパート4「人の四季(Seasons Of Man)である。
パート1では「あなた」と「わたし」がより良い状態へ変革し、「あなた」の完全性に関係して、「私」の上昇と下降の動きが始まった。パート2「全体保持」は、 変革の後に「私」の混乱と再統合がなされ、「あなた」との結びつきが強まる。そこから「全体保持(total mass retain)」という安定状態が生まれた。パート3では、安定状態の中で、上昇と下降を繰り返しながら、「誠実な眼」を持つことの重要性が述べられ、「わたし」が「あなた」に近づきたい気持ちが示された。
最終パートのタイトル「人の四季(Seasons Of Man)」にある「seasons(四季)」という単語は、すでに「seasons will pass you by(季節はあなたを通り過ぎるだろう)」という表現としてパート1の最後の部分に出てきている。すでに「あなた」は完全なる存在となっていた。そのあなたを取り巻く世界が、季節が通り過ぎていく世界だとしたら、「Seasons Of Man」は完全な状態になった存在が目にする世界ということだろうか。
第1連で特徴的なのは「between(〜の間)」という表現が繰り返されていることだ。1行目の「note」は色々な意味があるが、第1連最後で「As song and chance...」とあるので、ここでは「音符」としてみた。音符という決められた音ではなく、音と音の間の「time(時間)」、そしてまた「focus(焦点)」ではなく、その間の「space(空間)」。それぞれが、よりプラスなイメージへとつながっている。
例えばそれは「勝利すること(triumphs)」や、あるいは負けることといった明確な事柄ではなく、もっとその間にある微妙で繊細で、分かりにくいものの中に、実は真実が隠されているとでも言うかのように。
広々とした空間へと腕を広げた男が登場する。彼を先導者として彼にわたしはついて行く。彼は振り返り指を指す。そこには全人類が見える。ほら見てごらんと言うところであろうか。「わたし」は首を振る。いやいや、見なくても人類たちがいる世界を知っている。なぜなら「わたし」はかつてそこにいたからだ。
しかし今「わたし」は、完全なる「あなた」を求め、先導者たる「彼」に従って、そこからさらなる高みへと至ろうとしている。わたしたちは「彼」と「わたし」、あるいは「彼」と「わたしたち」だろうか。丘の上から谷間の静けさを見渡す。
「call...to witness」という表現は「〜に証人となってもらう」という熟語。受動態の分詞構文と考えて、「わたしたち」の状態を示すように訳してみた。「わたしたち」は「循環(cycles)」がすでに過去のものとなってしまったことの証人として喧騒にあふれる人類から遠く離れ、谷間の静けさに感じ入っている。
そして三たび「between」が出てくる。「with movements in between the said remark(語られた言説の中間で動くことで)」がそれである。「in between」は「between」と同じ意味の二重前置詞として使われている。すでに決められた「時」、「空間」そして「言葉」ではなく、その「間」が重要な意味を持つことが、またここで示されるのだ。
そしてそのことにより「わたし」は「すべてに触れる(手が届く)」存在となる。「this」は「the past」か。つまり「過去の全てを知ることのできる存在」となれるということだろうか。
「わたし」は完全なる「あなた」に近づきつつある。「季節(四季)はあなたを通り過ぎるだろう」という文はパート1の最後にも出てきたが、そこで始めての未来形だと指摘した。しかしこの「will」は、未来を示すものではなく、不完全な「わたし」には想像することしかできないが、きっとそうなのであろうという確信のある推定を示すwillだと思われる。
そして「あなた」は「seed(種子、根源)」から「sun(太陽、太陽のような輝かしい存在)」にまで行き来する。「call」は「呼ぶ」という意味が基本であるが、「神が呼び出す、招く」という意味もある。パート1で出てきた「master」(主、主たる存在)の下で、完全体となった「あなた」。そこに着実に近づきつつある「わたし」。
パート4は、既存の概念を破ることで高みへ上ることができることを知った「わたし」の自信や安心に満ちた雰囲気が感じられる。依然として上昇と下降を繰り返している「わたし」であるが、確実に「あなた」へと近づきつつあり、やがて「わたし」にも「季節」が訪れるようになるのかもしれない。
不安定な状態を示していた上昇と下降は、今希望に満ちた高みに至るための動きとして感じられ、この長大な曲は全体として、抽象的ではあるけれど前向きな、不完全ではあるけれど未来を感じさせるイメージによるカタルシスを感じさせて堂々と終わりを告げる。既存の概念から解き放たれた魂が、未来への希望と喜びを獲得する歌だと言ってもいいかもしれない。
完全な存在としての目標を定め(パート1)、自分をしっかり見つめ(パート2)、「誠実な眼」を持つことの大切さを知り(パート3)、そして既存の概念、価値観から解き放たれることで、より高みへと上って行く(パート4)という旅が終わった。
作詞をしたJon Anderson(ジョン・アンダーソン)は1976年に次のように言っている。
「この曲の歌詞は一連の夢のようになった。最後の歌詞は僕がずっと昔に見た夢で、この世からあの世へと行く内容だったんだけど、すごく幻想的だったんで、それ以来僕は死を怖いとは思わなくなった。(中略)死というのは人間の肉体が生まれるのと同様、すごく美しい経験なんだということが見えてきた。この曲にはそれが現れていて、すごく牧歌的な経験で、怖いようなものじゃない。」
現世の不安定な状態が上昇と下降であるなら、「死」を恐怖の対象から「美しい経験」へと捉え直すことで、上昇と下降が不安から希望への運動へと変わっていく。この曲にはそんなJonの思いが込められているのかもしれない。
以上、長旅におつき合いいただき、ありがとうございました。「危機」全訳完了。
IV. Seasons Of Man / Yes
■Close to the Edge(危機)収録
IV. 人の四季
音符の間の時間が 彩りを情景へと結びつける
勝利することが不変の人気を得ることで人は混乱する そう思える
円錐形焦点の間の空間は 愛を知るという高みへと登り詰める
歌と運命が時を紡ぎ出し 失われていた社会的節度が支配力を増すとともに
そして 空間へと腕を広げて見せている男に従えば
彼は振り返り 指を指した すべての人類が姿を現す
わたしは首を横に振り 微笑んでささやいた その場所をすべて知っていると
丘の上でわたしたちは谷間の静けさを見渡した
循環がすでに過去のものとなったことの証人として
そしてすでに語られた言説の中間で動くことで わたしたちはこれらすべてに触れる
瀬戸際の近く 下の川のそば
下の終局のあたり 角をそばを回り込んだところ
季節はあなたを通り過ぎるだろう
全ては終わり 完了したから
根源たる種子へ そしてまっすぐに太陽へと天命を受け
そしてあなたが発見し あなたが全体となったから
季節はあなたを通り過ぎるだろう
わたしは上昇し わたしは下降する
わたしは上昇し わたしは下降する
わたしは上昇し わたしは下降する
IV Seasons Of Man
The time between the notes relates the color to the scenes
A constant vogue of triumphs dislocate man, so it seems
And space between the focus shape ascend knowledge of love
As song and chance develop time, lost social temperance rules above
Then according to the man who showed his outstretched arm to space
He turned around and pointed, revealing all the human race
I shook my head and smiled a whisper, knowing all about the place
On the hill we viewed the silence of the valley
Called to witness cycles only of the past
And we reach all this with movements in between the said remark
Close to the edge, down by the river
Down at the end, round by the corner
Seasons will pass you by
Now that it's all over and done
Called to the seed, right to the sun
Now that you find, now that you're whole
Seasons will pass you by
I get up, I get down
I get up, I get down
I get up, I get down
【解説】
Yesの「危機(Close to the Edge)」のパート4「人の四季(Seasons Of Man)である。
パート1では「あなた」と「わたし」がより良い状態へ変革し、「あなた」の完全性に関係して、「私」の上昇と下降の動きが始まった。パート2「全体保持」は、 変革の後に「私」の混乱と再統合がなされ、「あなた」との結びつきが強まる。そこから「全体保持(total mass retain)」という安定状態が生まれた。パート3では、安定状態の中で、上昇と下降を繰り返しながら、「誠実な眼」を持つことの重要性が述べられ、「わたし」が「あなた」に近づきたい気持ちが示された。
最終パートのタイトル「人の四季(Seasons Of Man)」にある「seasons(四季)」という単語は、すでに「seasons will pass you by(季節はあなたを通り過ぎるだろう)」という表現としてパート1の最後の部分に出てきている。すでに「あなた」は完全なる存在となっていた。そのあなたを取り巻く世界が、季節が通り過ぎていく世界だとしたら、「Seasons Of Man」は完全な状態になった存在が目にする世界ということだろうか。
第1連で特徴的なのは「between(〜の間)」という表現が繰り返されていることだ。1行目の「note」は色々な意味があるが、第1連最後で「As song and chance...」とあるので、ここでは「音符」としてみた。音符という決められた音ではなく、音と音の間の「time(時間)」、そしてまた「focus(焦点)」ではなく、その間の「space(空間)」。それぞれが、よりプラスなイメージへとつながっている。
例えばそれは「勝利すること(triumphs)」や、あるいは負けることといった明確な事柄ではなく、もっとその間にある微妙で繊細で、分かりにくいものの中に、実は真実が隠されているとでも言うかのように。
広々とした空間へと腕を広げた男が登場する。彼を先導者として彼にわたしはついて行く。彼は振り返り指を指す。そこには全人類が見える。ほら見てごらんと言うところであろうか。「わたし」は首を振る。いやいや、見なくても人類たちがいる世界を知っている。なぜなら「わたし」はかつてそこにいたからだ。
しかし今「わたし」は、完全なる「あなた」を求め、先導者たる「彼」に従って、そこからさらなる高みへと至ろうとしている。わたしたちは「彼」と「わたし」、あるいは「彼」と「わたしたち」だろうか。丘の上から谷間の静けさを見渡す。
「call...to witness」という表現は「〜に証人となってもらう」という熟語。受動態の分詞構文と考えて、「わたしたち」の状態を示すように訳してみた。「わたしたち」は「循環(cycles)」がすでに過去のものとなってしまったことの証人として喧騒にあふれる人類から遠く離れ、谷間の静けさに感じ入っている。
そして三たび「between」が出てくる。「with movements in between the said remark(語られた言説の中間で動くことで)」がそれである。「in between」は「between」と同じ意味の二重前置詞として使われている。すでに決められた「時」、「空間」そして「言葉」ではなく、その「間」が重要な意味を持つことが、またここで示されるのだ。
そしてそのことにより「わたし」は「すべてに触れる(手が届く)」存在となる。「this」は「the past」か。つまり「過去の全てを知ることのできる存在」となれるということだろうか。
「わたし」は完全なる「あなた」に近づきつつある。「季節(四季)はあなたを通り過ぎるだろう」という文はパート1の最後にも出てきたが、そこで始めての未来形だと指摘した。しかしこの「will」は、未来を示すものではなく、不完全な「わたし」には想像することしかできないが、きっとそうなのであろうという確信のある推定を示すwillだと思われる。
そして「あなた」は「seed(種子、根源)」から「sun(太陽、太陽のような輝かしい存在)」にまで行き来する。「call」は「呼ぶ」という意味が基本であるが、「神が呼び出す、招く」という意味もある。パート1で出てきた「master」(主、主たる存在)の下で、完全体となった「あなた」。そこに着実に近づきつつある「わたし」。
パート4は、既存の概念を破ることで高みへ上ることができることを知った「わたし」の自信や安心に満ちた雰囲気が感じられる。依然として上昇と下降を繰り返している「わたし」であるが、確実に「あなた」へと近づきつつあり、やがて「わたし」にも「季節」が訪れるようになるのかもしれない。
不安定な状態を示していた上昇と下降は、今希望に満ちた高みに至るための動きとして感じられ、この長大な曲は全体として、抽象的ではあるけれど前向きな、不完全ではあるけれど未来を感じさせるイメージによるカタルシスを感じさせて堂々と終わりを告げる。既存の概念から解き放たれた魂が、未来への希望と喜びを獲得する歌だと言ってもいいかもしれない。
完全な存在としての目標を定め(パート1)、自分をしっかり見つめ(パート2)、「誠実な眼」を持つことの大切さを知り(パート3)、そして既存の概念、価値観から解き放たれることで、より高みへと上って行く(パート4)という旅が終わった。
作詞をしたJon Anderson(ジョン・アンダーソン)は1976年に次のように言っている。
「この曲の歌詞は一連の夢のようになった。最後の歌詞は僕がずっと昔に見た夢で、この世からあの世へと行く内容だったんだけど、すごく幻想的だったんで、それ以来僕は死を怖いとは思わなくなった。(中略)死というのは人間の肉体が生まれるのと同様、すごく美しい経験なんだということが見えてきた。この曲にはそれが現れていて、すごく牧歌的な経験で、怖いようなものじゃない。」
「イエス・ストーリー 形而上学の物語」
(ティム・モーズ、シンコー・ミュージック、1998年)
(ティム・モーズ、シンコー・ミュージック、1998年)
現世の不安定な状態が上昇と下降であるなら、「死」を恐怖の対象から「美しい経験」へと捉え直すことで、上昇と下降が不安から希望への運動へと変わっていく。この曲にはそんなJonの思いが込められているのかもしれない。
以上、長旅におつき合いいただき、ありがとうございました。「危機」全訳完了。
fantastic!!
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