2009年3月17日火曜日

「オン・アン・アイランド」デヴィッド・ギルモア


原題:On an Island(ある島にて)

■「On an Island(オン・アン・アイランド)」収録






思い出してごらん あの夜のこと
月の光の中の白い足跡を
彼らはここも歩いて
誰もいない運動場、つまりこのゴーストタウンを抜けていった
あの子供たちのことさ 錆びたぶらんこに乗ってどんどん高く揺らして
一つの夢を分かち合っていた、島の上でね それは正しいことだって気がした

僕らは隣り合って寝転んだ
月と海の間で
しばらく星を見つけながらね

夜に身をゆだねよう
僕らは星まで行く途中にいる
引き潮と満ち潮
そんなことはいいんだ
隣りに入る彼女の温かさを感じるんだ

思い出してごらん あの夜のこと
温かさと笑い声
ろうそくが燃えていた
教会に人気はなかったけれど
夜明けに僕らは誰もいない通りを抜けて港へ出たね
夢見る人たちは去って行っても構わないんだ でもあの時以来、ずっとここに留まっているんだ

夜に身をゆだねよう
僕らは星まで行く途中にいる
引き潮と満ち潮
そんなことはいいんだ
隣りに入る彼女の温かさを感じるんだ

Remember that night
White steps in the moonlight
They walked here too
Through empty playground, this ghosts' town
Children again, on rusting swings getting higher
Sharing a dream, on an island, it felt right

We lay side by side
Between the moon and the tide
Mapping the stars for a while

Let the night surround you
We're halfway to the stars
Ebb and flow
Let it go
Feel her warmth beside you

Remember that night
The warmth and the laughter
Candles burned
Though the church was deserted
At dawn we went down through empty streets to the harbour
Dreamers may leave, but they're here ever after

Let the night surround you
We're halfway to the stars
Ebb and flow
Let it go
Feel her warmth beside you

【解説】
ピンク・フロイドのギタリスト、デヴィッド・ギルモア(David Gilmour)が2006年に作り上げた22年ぶりのアルバム「On an Island」から、そのタイトル曲。鳥肌が立つくらい美しい曲。メロディー、コーラス、ギター、どれを取っても素晴らしい名曲。そしてもちろん歌詞も。

イメージされるのは長年付き添ってきた恋人、あるいは伴侶。まだ二人とも若くて、自由な時間がたくさんあった頃、夜家を抜け出してか、家に帰らないで、友だちたちと過ごした夜を、静かに思い出す。子供に戻ったように、ブランコに乗ったりしながら、ある島の上で夢を分かち合って。

教会に入り込みろうそくに火をつけてみたり、朝の浜辺へ降りて行ったり。他愛ないけど幸せで貴重なあの夜、あの時代、あの時の二人。

「Let the night surround you」からのサビの部分は、現在形。だから昔のことを思い出しながら、今も二人は同じように隣り合って横になり、あの頃を懐かしみながら、今を愛おしんでいる。

夜の暗闇と静けさを身体で感じれば、空の星の近くまで気持ちが飛んで行くよう。波の満ち引き、時間の流れ、周りで起こっている自然の動き、そうしたものに逆らわず、なすがままにしておこう。

「Feel her warmth beside you」は命令文だから、文法的な流れからすると、「we」(私たち)のうちの「you」(あなた)に命令していることになる。「you」に、「彼女の温かさを感じなさい」とを命じていることになるのだ。

でもそれだと「彼女って誰?」ってことになってしまう。そこでこの一行だけ、自分への命令だと取りたい。自分に対して「おまえは横にいる彼女のぬくもりを感じるんだよ」と。

実際にどこかの島での思い出があるのかもしれない。それがこの曲を作るきっかけになったのかもしれない。しかし、夢見る人たちは、その後もずっとこの島に留まっているんだ、と言う時、島はもう現実のものではなく、大切な記憶の詰まった心の中の世界になっている。そしてこの曲は、聴き手の心の中にも
実はそういう島があることに気づかせてくれる。

振り返る人生を持っている大人のための、美しくて渋くて、哀しみをたたえた歌だ。

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