2009年3月25日水曜日

「リサイクルド(5〜7)」ネクター

原題:Recycled

■「Recycled」(リサイクルド)収録







5. 再循環
ここ、そこに、新しい奇跡がゆるやかにやって来る
月光に照らされた海のように、姿を変え、ゆがんだかたちで
…そうかあなだは望むもの全てを手にしていたのか
列を作れ、恐れるな
人類の新しい運命がここにある…あなたはそう耳にする。

鳴き鳥、再循環、おなじみの懐かしい音楽
依然としてあなたは奴隷のように前へ進み続ける、全て消費されるまで。
…しかし私はあたなが求める人生を手に入れるのを目にするだろう、
列を作れ、恐れるな
あなたをここへ連れてきたのは人類だ…あなたはそう耳にする

6. 真実への飛翔
あなたは汚れていない砦で暮らしている、
ガラスの壁に取り囲まれて、
頭を地面に突っ込んで資源と闘っている
民族の切迫した要求は、他の民族の欲望を満たす
下へ下へと下降しながら。

コンクリートのジャングルを横切って飛べ
空高く雲の中を
とても誇り高くそびえる水晶の山々を見上げながら。
不思議に思う必要は無い
自然はゆっくりと死んで行く
下へ下へと下降しながら。

7. 終わりのある空想
あなたには見えるか?見えるか?
見えるか?見えるか?
通り過ぎて行ったある生命の廃墟を、
空を照らす燃え盛る塔によって囲まれながら
あなたは自分がワシの王だと想像してみなさい
目には涙を浮かべ、
あなたはわれわれに残された時間はたいして多くないことに気づく
下へ下へと
下へ下へと

5. Recycling
Here, there, new wonders gently steal,
disguised distorted like moonlit seas
...and I see you've taken all you need,
queue up, don't fear
there's man's new fortune here...you hear.

Song-birds, recycling, the same old tune,
Still you slave onwards, 'till all is used. ...tho' I'll see
you'll get the life you need,
queue up don't fear,
it's the man who brought you here...you hear.

6. Flight To Reality
You live in stainless forts,
with glass walls around,
Fight against resourses with your head in the ground,
A nation's urgent need fulfils another's greed
going down down
down down down down down

Fly across the concrete jungle
high in the clouds
Looking up to crystal mountains so proud.
No need to wonder why
nature slowly dies
going down down down
Going down down down
down down down down.

7. Unendless Imagination
Do you see? Do you see?
Do you do you see? Do you see?
Do you see the ruins
of a life gone by?
Built upon by burning towers
lighting the sky,
Imagine you're the prince of eagles
tears in your eyes,
Do you see there's not much time
before we go
down down... down down down down


【解説】
ネクター「Recyled(リサイクルド)の旧LPA面7曲の後半5〜7である。現在の世界を形作っていた“自動制御装置”が消耗し、旧世界を支配していた「あなた」が限界に達したことにより、あたらしい“自動制御装置”と新しい支配者「わたし」へ世界は移行する時期が来ている状況にあった。「かれら」、つまり時の権力者、帝国の支配者たちは全てを手に入れながら、多大なムダなる廃棄物、ムダなるエネルギーを人目を避けて排出していた。

そして「5. 再循環」が始まる。新しい奇跡、人類の新しい運命が始まる。「あなた」は自分のやり方を捨てる事ができず奴隷のように進み続ける。それが「あなた」の人生を手に入れる「あなた」のやり方なのだろう。それは結局人類があなたをここに導いてきた結果なのだ。

「列をなせ、恐れるな」と、「わたし」は再循環の変化の中で、新しい秩序を作っていこうとする。旧世界の「あなた」を哀れみながら。

その「あなた」に旧世界を見せようとするのが、「6. 真実への飛翔」だろうか。一見汚れのないガラス張りの砦に暮らしていながら、「頭を地面に突っ込んで資源と闘っている」とは、石油や石炭などの自然のエネルギーに依存している姿か。そのエネルギーが欲しくてたまらない民族は、そのエネルギーを所有する民族の欲望を無視する事はできない。そうした旧世界の仕組みが、再循環の中で壊れていく。自然はゆっくりと死んでいく。新しい世界、新しい人類の運命が回り出す。

「7. 終わりある想像」
飛翔を続けながら、「Do you see?(見えるか?)」と「わたし」が「あなた」に問うている。これらの、過ぎ去った人類の「ruins(廃墟)」が。「prince of eagles」は「ワシの王」とか「ワシの王子」とかいうことだが、「eagle eye」が「人の行動を監視する人」という意味を持つように、良く観察することを命じているのだ。「tears in your eyes」とは「(その惨状に)目に涙を浮かべながら」。
「自然もゆっくり死んでいく」中で、すべての秩序が新しく生まれ変わろうとする今、「ワシの王」を想像して現状に目を配ることすら限界(unendless)になる。「Do you see there's not much time before we go down down...」は、飛翔を続けている旧支配者である「あなた」と新支配者である「わたし」が、このままもうすぐ落ちていくのだと言いたいのか。

サウンド的には「5. Recycling」で静かなパートになる。再循環の始まりは避けられないことを諭すかのように。そして「6. Flight to Reality」から再びスピードがアップし、タイトル通り飛翔するかのごとくグングン進んでいく。「7. Unendless Imagination」では、さらに合唱団が加わり、大きな盛り上がりをもってクライマックスを迎える。最後の爆発音のような音は、旧世界が終わる瞬間なのか。その後静かに流れるゆったりとした平和な音が、全てが終わった事を印象づけるかのようだ。

ハードなリズムとギター、そしてボーカルを核とし、メカニカルなシンセサイザーを活かしながら、ハイテンションで突き進んでいく
旧LPA面の1〜7は、新しい世界への再循環のための現在の世界の崩壊と消滅に向って行く様子が描かれていることがわかる。

そこに聖書的な人類の審判の日を見ることも、現実のエネルギー問題や自然破壊問題を見ることも、できるだろう。ちなみに「Recycled」の発表は1975年。第4次中東戦争の勃発が1973年、それに伴ういわゆる“オイルショック”が広がるのが1973年から1974年にかけて。おそらく初めて、欧米先進国の繁栄が中東の石油に大きく依存していることが実感された時期であろう。

本アルバムのテーマに、そのことが影響していないとは言えないのではないだろうか。そしてそうした経済システムや結果的に起こっている環境破壊など、ここの作品で現された危機意識は、現在にも大きくつながるものであろうと思う。

その後の世界のヒントは、旧LPB面にあたる「8〜11」に隠されているかもしれない。いずれ取り上げる事にしたい。

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