2009年7月18日土曜日

「危機 III. 上昇と下降」イエス

原題:Close to the Edge
  III. I Get Up, I Get Down / Yes

Close to the Edge危機)収録






I. 上昇と下降

あなたは 白いレースに身を包み 悲し気な目をした女性をはっきりと見ることができた
彼女は言っていた 自分の領地に苦難を与えた責めを自分は負うことになるだろうと

私は上昇し 私は下降する
私は上昇し 私は下降する

二百万の人々は かろうじて満足する
二百人の女性が一人の女性が泣くのを見つめる 遅過ぎる
誠実なる眼は成果を上げる
毎日わたしたちはいったい何百万の人々を欺いているのだろうか

 (コーラス)
 彼女は彼らから言われた
 彼女の物語の驚くべき部分を巻き付けていくだろう
 利益が彼女の領地の子供たちに
 もたらされることだけを望みながら

わたしを管理してそこにいる者を管理しながら
わたしは無言でただ傍観し 道が見えると言っているのか?
真実はそのページのいたるところに書かれている
わたしがあたなにふさわしい歳になるにはどれほど歳をとればいいのだろう?
私は上昇し 私は下降する
私は上昇し 私は下降する


III I Get Up, I Get Down

In her white lace, you could clearly see the lady sadly looking
Saying that she'd take the blame
For the crucifixion of her own domain

I get up, I get down
I get up, I get down

Two million people barely satisfy
Two hundred women watch one woman cry, too late
The eyes of honesty can achieve
How many millions do we deceive each day?

(chorus)
She would coil their said
Amazement of her story asking only
Interest could be laid upon the children
Of her Domain

I get up, I get down
I get up, I get down

In charge of who is there in charge of me
Do I look on blindly and say I see the way?
The truth is written all along the page
How old will I be before I come of age for you?

I get up, I get down
I get up, I get down
I get up, I get down



【解説】
Yesの「危機(Close to the Edge)」のパート3「上昇と下降(I Get Up, I Get Down)である。

パート1では「あなた」と「わたし」がより良い状態へ変革し、「あなた」の完全性に関係して、「私」の上昇と下降の動きが始まった。パート2「全体保持」は、変革の後に「私」の混乱と再統合がなされ、「あなた」との結びつきが強まる。そこから「全体保持(total mass retain)」という安定状態が生まれた。

パート3では「あなた」の話から始まる。「あなた」はある女性を見ることができた。それはあなたがもつ完全性ゆえなのかもしれない。その女性は、自らの領地に苦難を与えてしまったため、その責めを負わなければならない。イギリス的な女王、女帝の姿が浮かぶ。ちなみにcrucifixionには、十字架刑という意味もあるので、宗教的なイメージが重なっている。

それは第3連の最終2行にある「誠実なる目は成果を上げる/毎日わたしたちはいったい何百品の人々を欺いているのだろうか」に集約される、「不誠実さが報いを受ける物語」として語られていると言えそうである。

「あなた」は恐らくこの「誠実なる眼」を持っているのだ。だから不誠実さに気づくことができた。しかしわたしは「何も疑わずに、何も言わず(blindly)」傍観し、目の前に道が続いていると思っているが、それは「誠実なる眼」を持っていることにはならない。真実が書かれた書物から、その真実を読み取ることができてはいない。

だからあなたの完全性にふさわしい歳に、「わたし」はまだ至っていないのだ。完全性を持つ「あなた」という高みを見つめながら、「わたし」や「わたしたち」の不完全性を自覚しつつ、「わたし」は上昇と下降を繰り返す。

ちなみにJonがメインボーカルで歌うところに、SteveとChrisがバックで、カウンターメロディーを別の歌詞で歌う。それが(コーラス)として字下げした部分だ。実はアルバムに載っていた英語歌詞はいわゆるcalligraphy(装飾性の高い手書き文字)で書かれているので、ところどころ読みにくい上、一般の歌詞サイトではこの部分は収録されていない。

さらに書かれている文章の最初の部分が歌われていないため、歌われている歌詞部分のみ取り出し、意味を付けてみた。

「彼女」が責めを負うことで「かろうじて満足」した「二百万の人々」とは、領地の領民、あるいは国民か。「二百人」の女性とは数自体はあまり問題ではなく、彼女自身の悲しみや苦しみに気づくものたちは少なかったという例えではないか。

そこでコーラス部分にある「彼らから言われた彼女の物語の驚くべき部分」とは、彼女が領民から指摘、糾弾された裏切り行為、あるいは政策的な失敗のことを指すのだろうか。「coil(巻き付ける)」とは、一巻き二巻と螺旋状に続けていくイメージだから、欺きを残らず白状することの例えか。ただただ領地の子供たちへ、本来の利益がもたらされることだけを願いながら。

パート1、2と比べると、このパート3は少し具体的なイメージが描かれている。領地とそこを統治する女性。そうしたイメージを「不誠実さが報いを受ける物語」として描いたとすれば、特にイギリス人に取っては女王を意識せざるを得ない、刺激的なパートかもしれない。

しかし、そうした要素を含んでいるとしても、この一番静かなパート3が全体の流れの中で重要なのは、安定状態の中で、上昇と下降を繰り返しながら、「誠実さの眼」の重要性に触れ、それを持つ「あなた」に「わたし」が近づきたい気持ちを明確に示したことであろう。そしてそれには何年もの時が必要なのだ。

次回はいよいよ最終パート。続く。
  

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