2009年7月29日水曜日

「フェイス・オブ・イエスタデイ」イリュージョン

原題:Face of Yesterday / Illusion

Out Of The Mist(醒めた炎)収録





そのさびれた通りが 陽の光をさえぎった
するとその彫刻家が一つの夢を 彫像し塑造し始めた
しかしそれはすぐに はかない戯れに過ぎなくなった
悲しくも忘れ去られた風景
過ぎ去りし日の光景

その建築家は 土台を砂で作り上げた
そしてその苦労をいとわない 優しい手を広げた
助けを求めるために
彼が依存している人生に かたちを与えるために
しかしそれは 雨や雪のように降り行くだけだった
過ぎ去りし日の光景

その音楽家は 一つの楽譜を書いた
5つ6つ、あるいはそれ以上の楽器のために
しかし楽器たちが同時に音を出すと
不協和音が鳴り渡った
混乱の交響曲
過ぎ去りし日の光景


The lonely street eclipsed the sun
Until the sculptor had begun
To etch and mould a dream
Which soon became a passing game
A sad forgotten scene
A face of yesterday

The builder had his base of sand
And stretched his willing gentle hand
To seek the help
To shape the life he had depended on
Which fell like rain and snow
A face of yesterday

The man of music wrote a score
For several instruments or more
When they played together
Then they found disharmony
A cluttered symphony
A face of yesterday


【メモ】
「Face Of Yesterday」はイギリスのクラシカルなフォーク・ロックバンド、Illusion(イリュージョン)の1stアルバム「Out Of The Mist」(邦題は「醒めた炎」)の中の一曲。

Illusionは、オリジナル・ルネッサンス(Renaissance)が解散した後に、再びオリジナルのルネッサンスを復活させるべく結成されたバンド。活動を開始するにあたって、すでにバンド名の使用権がアニー・ハズラム(Annie Haslam)を擁する別バンドに移っていたことにより、オリジナル・ルネッサンスの2ndアルバムのタイトルをバンド名とした。

Illusion(幻影)というバンドの「Out Of The Mist(霧の中から)」とくれば、嫌でも幻想的な音を期待するところ。そしてこの1stアルバムは、ジェーン・レルフ(Jane Relf)の美しい歌声とフォーキーなメロディー、そしてクラシカルなアレンジを以て、そうした期待に十分に応えた傑作アルバムである。

どの曲も歌声の魅力を活かした翳りのある素晴らしい出来だが、この「Face Of The Yesterday」は、中でも特に美しいスキャットが印象的な名曲。

歌詞は3連からなり、それぞれ「彫刻家」、「建築家」、「音楽家」について歌われている。そしてどの人物も何かを目指して力を尽くしながらも、報われない物語だ。彫刻家は夢を彫像(彫刻する)や塑造(粘土でかたちを作る)しようとし、建築家は砂の土台の上にできている人生をより強固なものにしようとし、音楽家は多くの楽器のための楽譜を書き上げる。

何かを作り出そうとする彫刻家、作り上げたものを守ろうとする建築家、作り上げたものが実は不完全であった音楽家。努力はすべて報われない。こうして芸術家を取り上げているのは、その夢と努力と挫折が、より明確にイメージしやすいからであろう。

悲しい歌。憂いに満ちた歌。確かに人生はそういうものかもしれない。しかし聴いた時にそれが恨み節にならないのは、ジェーン・レルフの、清楚で落ち着いた歌声と、淡々とした醒めた感じの歌い方による部分が大きい。

しかし詩的に見ても、タイトルにもなっている各連最終行の「A face of yesterday(過ぎ去りし日の一つの光景)」という表現が、そうした落ち着いた余韻を残す一行となっているのだ。カーペンターズ(Carpenters)の名曲「イェスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)」を引き合いに出すまでもな」く、「yesterday」には「昨日」という意味の他に「過去」という意味がある。つまり「これまでの人生の中の色々な面の一つ」ということなのだ。

思いが叶わなかったことを、人生の喜びや悲しみの一コマとすることで、人生そのものを悲観的に見てはいない。そういう悲しみも人生にはある。ジェーンの歌声が、静かに流れるオーケストラが、柔らかなピアノが、そしてクラシカルに動くベースが、聴く者をどこまでも優しく包み込んでくれる。

そして、かつて誰もが経験したであろうそうした悲しみを、懐かしんでいるかのような切なさがあふれる。歳を取り振り返る人生が長くなるほどに味わい深くなっていく曲だろうなぁと思う。何回聴いても良い曲だ。名曲中の名曲。


2 件のコメント:

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