2010年11月7日日曜日

「安息の鎮魂曲(R.I.P)」バンコ

原題:R.I.P (Requiescant In pace)/ Banco Del Mutuo Soccorso

Banco Del Mutuo Soccorso収録







「安らかに眠らんことを」

軍馬も兵士も折れた槍も
赤い血と
いるはずの神がいないままに
孤独の中で死んでいった人々の嘆きに染まっている

長きにわたり太陽と
埃とのどの渇きにさらされし弟子たちよ
あなたたちは常に死の不安を感じている
その理由が理解できないままに

安らかに眠らんことを 安らかに眠らんことを
安らかに眠らんことを 安らかに眠らんことを

死体の山は
あなたの栄光を示す
しかし自分自身に流した血は元に戻るだろう
あなたの戦いは終わったのだ、老いた戦士よ

そこで彼は風下に腰を降ろした
あなたの目は虚空をうつろに見つめる
太陽はその目を照らし
あなたの心臓を突き刺す短剣となる

あなたはもう、もう地平線に槍を突き刺そうとして
突進する必要はないのだ
超越した存在となるために
ただ神のみぞ知ることを発見するために

しかしあなたは望むだろう
あなたが体験した痛みや悲しみを
超越した存在となるために
ただ神のみぞ知ることを発見するために

超越した存在となるために
ただ神のみぞ知ることを発見するために


Horses bodies and broken spears
are colored in red,
complaints of people who die alone
without a Christ who is there.

Pupils huge sun-times
dust and thirst
Do you feel the anxiety of death always on
although you will not know why.

Requiescant in peace. Requiescant in peace.
Requiescant in peace. Requiescant in peace.

On piles of dead flesh
have set your glory
But the blood you spilled on yourself relapsed
your war is over, old soldier.

Now he sat down the wind
your eyes are left hanging in the sky
the sun is shining on the eye
into thy heart is a dagger

and you do not, do not lance no more
your spear to stab the horizon
to push beyond
to discover what only God knows

but you will only
the pain, the tears that you've got
to push beyond
to discover what only God knows.

To go beyond,
to discover what only God knows ...
※ 英詩はオリジナルイタリア語の歌詞を自動翻訳したものを使用しています


【メモ】
イタリアのバンドバンコ(Banco Del Mutuo Soccorso)のデビューアルバムからの2曲目。1曲目が語りなので、実質バンコが発表した最初の歌詞となる。

さてここで十分お断りしておきたい。ここで使用した英語の歌詞は実はイタリア語のオリジナル歌詞を自動翻訳して英訳したものなのだ。比較検討した結果、ここでは一番文章的に無理のないGoogle翻訳を使用している。

言語構造がまったく異なる日本語に翻訳するよりは、よりオリジナルな歌詞を理解し易いように英語翻訳を行なった。もちろんそれでも問題を多く含んだ英訳であることは考えられるが、それでもバンコの歌う世界に触れてみたいという気持ちから、敢えてこの英訳をもとに歌詞の和訳を試みた次第である。ご容赦願いたい。そしてお気づきの点があれば、ご指摘いただけるとうれしいです。

さてではその和訳(超訳か)をもとに、歌詞内容を見てみたい。タイトルの「R.I.P」はラテン語の「Requiescat in pace」を省略した言葉で「安らかに眠れ」という意味。つまり死者へ向けた手向けの言葉である。

ここでは戦い続け、ついに死に瀕している戦士の姿が描かれる。第1連「いるはずの神がいないままに/孤独の中で死んでいった人々」とあるが、そもそも神は自分を守ってくれるはずなのである。しかし死した人々は結果的に神に守られなかったことになる。その神への思いは通じなかった。いると思っていた神は、自らの傍らにはいなかったのだ。悲しい死。報われない死。絶望の中での死。

第2連では「pupil」という言葉が出てくるが、これは“神の教え子”というような意味合いだろうか。つまり神を信じる者たち。キリスト教国においては、一般市民がほとんど含まれるといえるだろう。彼らは理由もわからないまま、数々の苦難の中を生きる。そして常に死の不安を抱いている。

第1連では、戦場で戦い、傷つき、絶望の中で死んでいった兵士たちを、そして第2連では死の不安を抱えながら、苦しみつつ日々を行きている人々を、それぞれ描いている。

そして第3連。「安らかに眠らんことを」という言葉が、おそらくその両者に向けて繰り返される。

第4連では「老いた戦士」が登場する。彼はこれまで戦い続け、死体の山を気づき、栄光を手にしてきた。しかしその分、自らも血を流してきた。しかしその血もまた戻ってくる。なぜなら戦いは終わったからだ。もはや新たに血を流す必要はない。

ところがこの「老いた戦士」は、今自由と平和と名声を手にしているわけではないことが、第5連でわかるのだ。彼は腰を降ろす。目はすでにうつろで、太陽の光がその目を照らし、その心臓を短剣のように突き刺す。そう、彼は今死なんとしているのだ。戦いに疲れたか戦いに敗れたか、老いた戦士である彼は今その最後の時を迎えようとしているのだ。

その彼をいたわるように第6連が続く。もう戦うことはないのだ。戦いをやめてよいのだ。「地平線に槍を突き刺そうとして/突進する…」という比喩は、意味も目的も良くわからないまま、戦い続けてきた様子を示しているのだろうか。そしてまもなく「(生を)超越した存在」となり「神のみぞ知ることを知る」のである。

しかしこの老兵士は死に際して、自分が体験してきた苦しみや悲しみを求める。ここでは「will」を助動詞ではなく「欲する」という動詞として解した。おそらくそれが彼にとっての人生であったのだ。その人生を否定することは彼にはできないのかもしれない。

そして今彼は苦しく悲しい思い出を胸に、死を迎えようとしている。

この詩が物語っているのは何であろうか。「戦場」での敵との戦いは、そのまま「人生」を生き抜く戦いの比喩と取ることも可能だろう。「老いた戦士」は最後に戦いに負けたのではなく、まさにその「老いた」ことで、戦いの場から身を引こうとしているのかもしれない。

しかし傷つき、嘆き、不安を抱き、痛みや悲しみを経験しながらも、彼は「神」を信じ、「神」のもとへと召され、「神」のみが知っていた真実に触れることを求めているのだ。老兵士の描写からも、そこに「神」あるいは「宗教」への批判や非難は感じられない。

この曲はイタリアらしい、きわめてキリスト教的な人生のありようと、その最後に待っているR.I.P(安らかに眠る)という希望を歌ったものだと言えるのではないだろうか。

宗教的な内容ながら、敢えて「キリスト教」という言葉を使ったのは、イタリア国民の97%がキリスト教カトリック教徒である(外務省:イタリア共和国より)という背景、そして「God」がキリスト教の神を指すことが多いという理由による。

若者たちが共産主義体制を求めていた1970年前半当時の政治的背景を感じさせるAreaとは違って、この曲では明確な体制批判も宗教批判もない。しかし、もしかすると「神」を信じ「神」のもとに行くことを願って死んでいく人々に、結局「神」は苦しみと悲しみしか与えていないのではないかという疑問を投げかけているのかもしれない。

だから、せめて「神」を信じて生きている時には報われたなかった「安らぎ」を、彼が信じていた通りに死に際して得られることを、死んでいく老兵士に願っているのかもしれない。

 

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