原題:New Horizons / The Moody Blues(ザ・ムーディー・ブルース) セヴンス・ソジャーン/神秘な世界 (Seventh Sojourn)収録 僕らは1人が持つに十分な夢を抱いてきた そして僕は3人分にもあたるほどの愛を得た 僕は僕の望みが僕を癒してくれるようにし 僕は海の彼方に新しい水平線を得た でもあなたからの大切な贈り物を決して失いたくないんだ それは常にそのままでいて欲しいんだ だって僕自身の心の平和を見つけていくんだ いつの日か… 僕らが見つけたこの場所はいったいどこだろう 僕らが縛られている場所がどこか誰も知らない 僕は耳を澄ます、そして目にしたいと思う だって自分のためにたくさんの涙を流してきたんだから でもあなたからの大切な贈り物を決して失いたくないんだ それは常にそのままでいて欲しいんだ だって僕自身の心の平和を見つけていくんだ いつの日か… 自由に舞い上がる風に乗って あなたの翼を広げなさい 僕は見始める 景色から遠ざかり 心からも自由になって 悪夢が現実とならないところで 僕らは一人が持つに十分な夢を抱いてきた そして僕は3人分にもあたるほどの愛を得た 僕は僕の望みが僕を癒してくれるようにし 僕は海の彼方に新しい水平線を得た でもあなたからの大切な贈り物を決して失いたくないんだ それは常にそのままでいて欲しいんだ だって僕自身の心の平和を見つけていくんだ いつの日か… いつの日か… Well I've had dreams enough for one And I've got love enough for three I have my hopes to comfort me I got my new horizons out to sea But I'm never going to lose your precious gift It will always be that way Cos I know I'm going to find my own peace of mind Someday... Where is this place that we have found Nobody knows where we are bound I long to hear, I need to see Cos I've shed tears too many for me But I'm never going to lose your precious gift It will always be that way Cos I know I'm going to find my own peace of mind Someday... On the wind soaring free Spread your wings I'm beginning to see Out of mind far from view Beyond the reach of a nightmare come true Well I've had dreams enough for one And I got love enough for three I have my hopes to comfort me I got my new horizons out to sea But I'm never going to lose your precious gift It will always be that way Cos I know I'm going to find my own peace of mind Someday... Someway... 【メモ】 イギリスのバンド、ムーディー・ブルース(The Moody Blues)の7枚目のアルバム「Seventh Sojourn(神秘な世界)」より。ムーディー・ブルースをプログレッシヴ・ロックに入れるかどうかは微妙なところだが、親しみやすく深みのあるメロディーと、暖かいボーカルとグリーク風ハーモニー、そしてメロトロンやピンダトロンを駆使した広がりのある優しい世界は唯一無二なもの。 ここでは「私」と「あなた」と「私たち」が出てくる。第1連では「僕ら」と「僕」が出てくる。そこで述べられているのは「僕」と「僕ら」がともに過ごしてきた関係を振り返っているのだろうか。最終行を除き全て現在完了形なので、そうした経験を経てきているという感じだろうか。夢を抱き、愛を求め、希望にすがり、新しい水平線を海へともたらした。 「horizons」と複数形になると「思考、知識などの“地平”、視野、限界」という意味も出てくる。海の水平線にかけているのだろうが、いくつもの新しい視野、あるいは新しい人生の目的を手に入れたとも取れそうである。 しかし、第2連で僕の一番切なる思いが述べられる。「あなたからの大切な贈り物を決して失いたくない」という思い。そして「それはずっとそのままでいて欲しいんだ」という願い。 優しいJustin Hayward(ジャスティン・ヘイワード)のボーカルと、心に染み込むようなメロディー、そしてアコースティックな素朴な演奏を耳にしていると、この「あなたからの大切な贈り物」とは「あなたからの愛」ではないかと思えてくるのだ。 あなたの愛を感じることで、単純に幸福の絶頂に至り、苦しみから解き放たれるわけではない。そうした愛は若い時代の愛なんじゃないかな。「私」はあなたからの愛を支えに、自分自身の平和を見つけていこうとしている。それがいつの日になるかわからないけれど。それこそが僕が海の遠い彼方に見いだした、新しい水平線なのかもしれない。
原題:Still...You Turn Me On / Emerson, Lake & Palmer Brain Salad Surgery(恐怖の頭脳改革)収録 君は天使になりたいのかい 君は星になりたいのかい 君は僕のギターに なにか魔法をかけたいのかい? 君は詩人になりたいのかい 君はギターの弦になりたいのかい? 君なら何にでもなれる 君は誰か他の秘密捜査員の恋人になりたいのかい? 君なら月に降り立つことだってできる 君は演奏者になりたいのかい ギターの弦になりたいのかい 僕に言わせておくれ - それは何の意味もないこと 見せかけの自分に溺れてしまえば もう何の意味もなくなることがわかるはずさ 君の目を覆う黒いガラスによって 君の肉体は結晶化してしまっているけれど それでも…僕は君に夢中なんだ 君は僕が頭をのせる枕になりたいのかい 君は僕のベッドの中の羽毛になりたいのかい? 君は雑誌のグラビアを飾りたいのかい;大騒ぎを巻き起こしたいかい? 日ごとに少しずつ悲しさが増し 頭がおかしくなっていく 誰かが僕にはしごを持ってきてくれるかな 君は歌手になりたいのかい 君は歌そのものになりたいのかい 僕に言わせておくれ - 君はもう十分に酷い状態さ 君だって すべてがあまりに激し過ぎると僕が君に言わなければならないってわかるだろう 僕の経験から言えば それは何の意味もなしてはいないのさ ただそれでも…僕は君に夢中なんだ Do you wanna be an angel, Do you wanna be a star, Do you wanna play some magic On my guitar? Do you wanna be a poet, Do you wanna be my string? You could be anything. Do you wanna be the lover of another Undercover? you could even be The man on the moon Do you wanna be the player, Do you wanna be the string, Let me tell you something- It just don't mean a thing. You see it really doesn't matterwhen you're buried in disguise. By the dark glass on your eyes, Though your flesh has crystallised; Still...you turn me on. Do you wanna be the pillow where I lay my head, Do you wanna be the feathers lying in my bed? Do you wanna be the colour cover of a magazine;Create a scene. Every day a little sadder, a little madder, Someone get me a ladder. Do you wanna be the singer, Do you wanna be the song? Let me tell you something- You just couldn't be more wrong. You see I really have to tell youthat it all gets so intense From my experienceit just doesn't seem to make sense Still...you turn me on. 【メモ】 エマーソン,レイク&パーマーの最高作と言われる「恐怖の頭脳改革(Brain Salad Sergery)」から、ベース&ボーカル&ギターのグレッグ・レイクが弾き語るように歌う叙情的な小曲。荘厳な「聖地エルサレム」、ヘヴィーな「トッカータ」と続いた後に来る、一服の清涼剤的なアコースティックな曲だ。 曲は「僕」が「君」に語りかけるような歌詞になっている。タイトルの「Still...you turn me on」から先に見てしまうと、まず「still」は「今でも、それでも」という意味。「…」で、ちょっと言いよどんで、「you turn me on」(君は僕を夢中にさせる)というふうにやわらかく解釈したが、「turn...on」は「刺激する、その気にさせる、性的に興奮させる」という意味を持つ表現。だからちょっと下品な表現にすれば「君にムラムラしちゃうぜ」っていう感じか。
さて、ではさらに深読みするとどうなるか。実は「turn on」には「ドラッグ体験をさせる、酔わせる」という意味がある。そうした視点から歌詞を見直してみると、「君」はドラッグを擬人化しているようにも思えてくる。「君」がしたいことは「僕」がドラッグ使用中に体験する幻覚。「君」が幻覚としてみせてくれるものの数々。「your flesh has crystallized」とあるが、ドラッグのうちコカインやヘロインは粉末状の結晶(crystal)、LSDも純粋なかたちでは透明な結晶(crystal)である。
つまり「何にでもなれる」ような幻覚を見せてくれるドラッグに対して、そんなことを続けていても、自分を欺いているだけで何の意味もないという思いで、日々苦しさを増していく自分。もう最低のところまで落ちてしまったと思う自分。もう限界ギリギリのところまで来てしまった自分。最終連の「it all get so intense(すべてが激し過ぎる)」も意味深である。
原題:Exiles / King Crimson Larks' Tongues In Aspic(太陽と戦慄)収録 この遥か遠くの地において今 不思議なことにわたしの手のひらには 期待で汗がじっとりとにじんでいるのだ 春、空気は暖かくなっていく 街の灯り 路地裏で歩兵隊遊びをする 子どもの眼差し 友たち - 彼らは私の言いたいことをわかってくれるだろうか? 郊外の午後に降る雨 そして生い茂る緑 あぁしかし 私は行かねばならなかった 足跡は遥か後ろに置き去りにした 名声からの呼びかけに応じるために さもなくば飲んだくれとして名を上げるだけだった その結果今 以前よりましなこの生活で これまでとは違った理解の仕方をするようになったし こうした終わりなき日々から より大きな共感を得るようになるだろうけれど そしてまた 時というものが 孤独のもたらす害ではないと思っているのだけれど 私の家は砂浜に近い場所だった 断崖と軍楽隊が 普通の音楽を奏でていたものだ Now in this faraway land Strange that the palms of my hands Should be damp with expectancy Spring, and the air's turning mild City lights and the glimpse of a child Of the alleyway infantry Friends – do they know what I mean? Rain and the gathering green Of an afternoon out of town But lord I had to go The trail was laid too slow behind me To face the call of fame Or make a drunkard's name for me Though now this better life Has brought a different understanding And from these endless days Shall come a broader sympathy And though I count the hours To be alone's no injury My home was a place by the sand Cliffs and a military band Blew an air of normality 【メモ】 King Crimsonがメンバーを一新し、よりインストゥルメンタル、インプロヴィゼーション志向が強まった1973年発表のアルバム「Larks' Tongues In Aspic(太陽と戦慄)」からの一曲。
そして現在暮らしている郊外の緑豊かな地で、砂浜に近い場所にあった故郷の家に思いをはせる。そこには「断崖(cliffs)」を抜ける風や波の奏でる音楽(air)や軍楽隊が練習する音楽(air)が聴こえてくる場所だった。軍の駐屯地があったのかもしれない。だから「私」は「路地裏で歩兵隊遊びをする子ども(a child of the alleyway infantry)」の眼差しに思わず目を留めて、故郷への思いが甦ってしまったのだろう。
作詞はバンドメンバーではないリチャード・パーマー・ジェイムズ(Richard Palmer-James)によるものだが、「名声」を求め、故郷を離れてツアーに明け暮れるながら「より良い生活」を手にしているバンドメンバーの気持ちにも通じるものがあったはずだ。そんな風にバンドに照らして見てみると、最後の「an air of normality」が、今バンドが突き進んでいる一種「正常でない、変則的な(abnormal)」音楽と対比させて、故郷で聞こえる音楽は平和で変化のない「普通の(normal)」ものだったと言っているようにも思える。 そうしたイマジネーションを刺激するリチャードの詞を、バンドが音によって見事な奥行きと深みを与えた傑作である。