2009年6月16日火曜日

「アダージョ」ニュー・トロルス

原題:Adagio(Shadows)/ New Trolls

Concerto Grosso I
コンチェルト・グロッソ I)収録





アダージョ(影たち)

君が僕の近くにいてくれることを願いながら
ただ自分が独りであることに気づくだけ
太陽が再び輝く時を待ちながら
あまりにも遥か彼方へ消え去ったことに気づくだけ
死ぬこと
つまり永久の眠りにつくこと
しかしたぶん夢を見てしまうだろう
死ぬこと
つまり永久の眠りにつくこと
しかしたぶん夢を見てしまうだろう

Adagio (Shadows)

Wishing you to be so near to me
Finding only my lonliness
Waiting for the sun to shine again
Finding that is gone too far away
To die
To sleep
Maybe to dream
To die
To sleep
Maybe to dream


【解説】
ニュー・トロルスの傑作アルバムと言われる「Concerto Grosso I」は、旧LPA面に並べられた4曲からなるアルバムタイトル曲が、基本的に「La Vittima Dementi」という映画のサウンドトラックとして作られている。

そしてその歌詞の一部が、シェイクスピア(William Shakespeare)の作品の中でも最大規模の戯曲「ハムレット(Hamlet)」から取られている。それはアルバムジャケット中央に白抜きで、

 To die / to sleep / perchance to dream  William Shakespeare
                   Hamlet
                   a. III sc. I


と書かれている部分だ。「ハムレット、act III(第3幕)、scene I(第1場)」での台詞である。有名な「To be, or not to be: that is the question:」から続く独白部分だ。

歌詞ではこの部分を使用しているが、「perchance」は同様な意味の「maybe」に変えられている。「perchance」を古めかしい表現として避けたのか、単語の音として強すぎるたのか、あるいは曲と合わせたときの語呂の問題か。尚、歌詞はアルバムに掲載されていなかったので、上記のものは、わたしが聴き取ったものである。「Finding that is gone to fare away」とするものも目にしたが、意味が通らない。素直に上記のように聴き取った。

実際の歌詞は短く、サウンドトラックとして作られたせいか、4曲につながりが感じられるものの、歌詞として独立した内容を持つものというよりは、劇に伴って心理状態を示すような感じのものだろう。しかしこの短い歌詞がたびたび繰り返されるため、じわじわと心に残る。

自分の愛する人に、そばにいて欲しいという切なる思いを抱きながら、それが叶わぬ孤独を噛み締め、また再び会える時を待ちながらも、手の届かないほどに遠くへ行ってしまったことはわかっている。この苦しく悲しく、やり場のない思い。

問題の「to die, to sleep, maybe to dream」の部分は、「ハムレット」ではこの後に「Ay, there's the rub.(あぁ、それが障害となるのだ。)」と続く。

つまり、死ぬことは永久の眠りにつくこと。ただ、眠ると夢を見る。死ぬことは恐れない。しかしそれでこの苦しみから解放されるのか。眠るのと同じように、たぶんまたこの苦しみを夢見ることになるのではないか。

そこまで思い悩み苦しんでいる「話者」の嘆きが、この短い表現に潜んでいる。

15本のヴァイオリンと2本のチェロからなるストリングス・オーケストラの美しさ、ヴァイオリン・ソロの見事さ、そしてストリングスと見事に融合したニュー・トロルスのメンバーのプレイの素晴らしさが、この短い言葉にさらに深い感情を注ぎ込んでいく。シェイクスピアの名フレーズを活かし切った名曲だ。

曲タイトルを確認しておくと、「コンチェルト・グロッソ I」は「1. アレグロ(軽快な)」、「2. アダージョ(ゆるやかに)」、「3. カデンツァ(楽曲終止前の自由な独奏部)- アンダンテ コン モート(気軽にのんびりと)」と、17〜18世紀のバロック音楽の様式を意識したものとなっている。

しかし最後の「4. Shadows」はストリングスの入らないバンドのみの演奏で、クラシック色はなくなる。しかし歌われる歌詞は1〜3曲目とつながっているし、タイトルも「アダージョ」の副題『シャドウズ』に呼応している。ただし歌詞は以下の1連が上記の歌詞の前に加わる。


常に探し求めながら
決して見つけることが出来ない
闇の中の君の影
常に探し求めながら
決して見つけることが出来ない
闇の中の僕の影

Always searching
Never finding
Your shadow in the dark
Always seaching
Never finding
My shadow in the dark


確かにアルバムの半分は映画用に作られたものだとしても、このアルバムは映画のサウンドトラックではない、ニュー・トロルスのオリジナル・アルバムとして扱われている。

それどころか、映画を差し置いて、イタリアンロックの名盤としての地位を築いているのだ。経緯はともかく、本アルバムがサウンドトラックにならなかったことは、大きな意味があったと言えるだろう。

しかしどんな映画のどんな場面に使われたのか、ちょっと気になる、この4曲。

最後に、タイトルの「Concerto Grosso」であるが、これは「合奏協奏曲」という意味で、「数個の独奏楽器からなる小合奏群と弦合奏中心の大合奏群とによって演奏される協奏曲。バロック時代の代表的器楽曲形式」とのこと(「大辞泉」(小学館)より)。小合奏群がバンド、大合奏群が弦楽オーケストラという関係から付けられたタイトルかと思われる。


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