2010年1月8日金曜日

「デブでよろよろの太陽」ピンク・フロイド


原題:Fat Old Sun

■「Atom Heart Mothere
(邦題は「原子心母」)収録






空に浮かぶあのデブでよろよろの太陽が沈む時
夏の宵の鳥たちが呼び起こす
ある夏の日曜日 そして一年
耳に残る音楽の響きを
遠くから聞こえるベルの音、刈られたばかりの草がとても良い匂い
川辺で両手を持って
僕を抱き起こして そしてまた寝かしておくれ

そしてもし君が何か目にしても、音を立てちゃダメだよ
足を引きずらないようにして歩くんだ
そして暖かな夜のとばりが降りるとき
もし君がとても不思議な深い音を耳にしたなら
そうしたら僕に歌っておくれ、歌っておくれよ…

空に浮かぶあのデブでよろよろの太陽が沈む時
夏の宵の鳥たちが呼び起こす
耳に残る子供たちの笑い声を
最後の陽の光が消えていく

そしてもし君が何か目にしても、音を立てちゃダメだよ
足を引きずらないようにして歩くんだ
そして暖かな夜のとばりが降りるとき
もし君がとても不思議な奥深い音を耳にしたなら
そうしたら僕に歌っておくれ、歌っておくれよ


When that fat old sun in the sky is falling
Summer evening birds are calling
Summer sunday and a year
The sound of music in my ears
Distant bells, new mown grass smells so sweet
By the river holding hands
Roll me up and lay me down

And if you see, don't make a sound
Pick your feet up off the ground
And if you hear as the warm night falls
A silver sound from a tongue so strange,
Sing to me, sing to me...

When that fat old sun in the sky is falling
Summer evening birds are calling
Children's laughter in my ears
The last sunlight disappears

And if you see, don't make a sound
Pick your feet up off the ground
And if you hear as the warm night falls
The silver sound from a tongue so strange
Sing to me, sing to me


【メモ】
ピンク・フロイドの出世作と言っていい「Atom Heart Mother(原子心母)」から、LPではB面に置かれていた小曲集の中の一曲。ロジャー・ウォーターズの「if」、リック・ライトの「Summer '68」と続いて、3曲目のこの曲はギターのデイヴ・ギルモアによるもの。

「君」と一緒にいる「僕」が語る、とても幸福な瞬間を歌った歌だ。それも他愛ない時の流れの中の一瞬に感じる幸福感。夏のギラギラとした陽射しを放つ蒸し暑くけだるい雰囲気を表現した「デブでよろよろの太陽」と表現がまず印象的。その暑さにちょっとウンザリしつつも、イライラしているわけでもなく、けだるさに身を任せてリラックスしている雰囲気が漂う。

その太陽も今沈もうとしている。シェークスピアが「真夏の夜の夢(A Midsummer Night's Dream)」を書いたように、夏の夜はまたどことなく不思議な時間でもある。

文法的には「When...falling」で切れて「太陽が沈む時」とし、「夏の宵の鳥たちが思い出させてくれる(calling)」と解釈した。その内容が以下に続くこと。

「僕」と「君」はおそらく恋人同士で、知り合ったのは一年前の夏。二人して草の上で横になっていると遠くから聞こえてくるのは教会の鐘(church bells)の音か。あるいは牛たちの鈴(cowbell)の音かもしれない。草の匂いもする。とても感覚的な刺激が並ぶ。視覚、聴覚、嗅覚。

「roll me up and lay me down」は、両腕を持って寝ている状態から引き寄せるように上体を起こし、また倒れるままに寝かせるような動作じゃないかと思う。引っ張り合いっこ。他愛ないスキンシップ。でも「roll」には性的な意味もあるから、そうしたイメージも重なる。

そしてもし「君」が「the silver sound from a tongue so strange」を耳にしたら、歌っておくれと「僕」は「君」にお願いする。わかりづらい部分であるが、「have a silver tongue(雄弁である)」という表現がある。この表現に引っ掛けているんじゃないかと思うのだ。

「雄弁」というのは「多弁」ということではない。言葉にしなくても多くのことを物語っているということだ。だから「様々なことを物語るとても不思議な音」といった感じか。それでは長過ぎるので、短く「不思議な奥深い音」としてみた。

こうして夜になっても二人のリラックスした時間、二人だけの親密な時間は続いていく。いや昼間の「デブでよろよろの太陽」が消えることで、さらに深まっていくのだ。

あらためて音や歌詞を見てみると、最新ソロアルバムの「On an Island」の世界に近いことに気づく。何とも言えない夢幻的な日暮れ時の心象風景を切り取った名曲である。


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