2009年5月7日木曜日

「キャン-ユーティリティ・アンド・ザ・コーストライナーズ」ジェネシス


原題:Can-Utility and the Coastliners

■「フォックストロット」収録





砂にまみれ波に洗われて
海辺にばらまかれた一冊の本のページたち
雲によって影が加わる
それは過去の眼差しのように、ページに目を通していく、しかし上げ潮が
権利を主張しながら 苦もなくページたちを奪っていく

書物のページは皆に飽き飽きしていた男について語っていた、

彼らは次のように歌っていたのだ、
「彼を讃えよう、彼を讃えよう」
「われらはおべっかを言う者など気にはしない」彼は叫んだ。
「われわれの命令で、流れる水すら退却する、
    わが力を示したまえ、わが足下で水を止まらせたまえ」
しかし呪文は力を保てず、
冷たい風が吹きすさぶのみ

北方から空一面にを覆うかのような軍勢が
怒りと嘲笑で非難をしながら、嵐のように激しく不安を高めるゆえに。
波が沈み行く王座を取り囲む
「彼に王位を、彼に王位を」と歌いながら

「われらが王を愛するものは、それを態度で示すのだ」
全ての者が膝を折り忠誠を誓う

しかし彼は例え捧げものが波間に落ち彼の希望が打ち砕かれたにもかかわらず
無理をして微笑みを浮かべた。
「誰も笑わぬ限りは、いかなるものも、わが平和を壊すことは不可能だ。」
さらに耳をすませ、さらに目を大きく開き、
まもなく彼らはずうずうしくも笑い出す。

顔を真っ赤にした小柄な男を見るがいい
もっとも彼の話はしばしば、彼は死んでいるんじゃないかと思えるものなんだが。



The scattered pages of a book by the sea
Held by the sand and washed by the waves
A shadow forms cast by a cloud,
Skimming by as eyes of the past, but the rising tide

Absorbs them effortlessly claiming.

They told of one who tired of all,

Singing, praise him, praise him."
We heed not flatterers, he cried,

"By our command, waters retreat,
Show my power, halt at my feet."
But the curse was lost,

Now cold winds blow.

Far from the north, overcast ranks advance
Fear of the storm accusing with rage and scorn.
The waves surround the sinking throne
Singing "Crown him, crown him."


"Those who love our majesty show themselves!"
All bent their knees.

But he forced a smile even though
His hopes lay dashed where offerings fell.

Nothing can my peace destroy as long as no one smiles.
More opened ears and opened eyes,
And soon they dare to laugh.

See a little man with his face turning red
Though his story's often told you can tell he's dead.



【解説】
まずこの歌詞の背景となりそうる記述があるので、それを見てみたい。

Can-Utility appears to be a word-play on the name of an old King, Canute (also spelled Kanute, or Knut) The Coastliners are his followers who in one version of the story are sycophants needing to be shown the truth, and in the other are the ones exposing the delusions of the king. Peter's lyrics seem to weave elements of both tales into one, leading us from the near future of Get ‘em Out by Friday, to a quasi-mythical timeless area.

「Can-Utility」は9世紀の王Canute(カヌート、クヌート:Kanute、Knutとも書く)言葉遊びとして使われている。「Coastliners」は、その話の一つのバージョンでは彼の家来達のことで、真実を教えて欲しがっているおべっか使いたち、もう一つのバージョンでは王の間違った考えを暴く者たちを指す。ピーターの歌詞は両方の要素を一つに織り込んでいるように見える。そしてわれわれは「Get'em Out by Fridy」の目の前の未来から、準神話的な時間のない場所へと導かれていくのだ。」

「話の一つのバージョン: Canute王は周りの国々のこびへつらいのため、不当な評判を得るようになる。特に彼がほぼ同時期にイングランド王とデンマーク王であったことに、北海 (The North Sea)は怒っていた。この奇妙な断定にうんざりした彼は、王座を浜辺に設置した。上げ潮は避けたが。彼は浜辺に座り、誰がなんと言おうと彼は海の王などではないことをまさに示すために、波に飲み込まれるがままにしていた。 12世紀の記録によると、ハンティンドンのHenryがCanuteに海辺での王座の置き方と、潮に命じて彼の足下やローブを濡らさないようにする方法を伝えた。しかし潮は止まらなかった。Henryによれば、Canuteは後ろへ飛び退き言ったという。『王の持つ力など、いかに空虚で役立たずなものか皆に知らしめてくれ、天、地、そして海が永久不変の法則により従う者でなくては、王を名乗る価値はないのだから。』」
「LyricWiki」『Can-Utility and the Coastliners』Triviaより)

この曲のタイトルが「Can-Utility and the Coastliners」ということは、上記の説明から「カヌート王と家来達」というイメージだろうか。

The North Sea(北海)からの怒りをかっていたカヌート王、浜辺に王座を設置したという異様な行動。吹きさらされた浜辺で、海の風と海の水に、当然のように奪いされていく書物のページ。

第2連に冒頭の「They」が何をさすのか。悩んだ。第1連で複数の単語は「pages」、「waves」、「eyes」の3つ。それ意外に「この話は皆知っているだろうから、いきなりTheyと言って(例えば)彼らを示すことがわかるだろう」というような、暗黙の了解に基づいた何か、あるいは誰か。例えば家来たちとか。

しかしここでは「pages」と解釈した。そうすることで、第1連で突然出てくる一冊の書物、バラバラになっているページが、以下の内容に繋がっていくと思ったからだ。

その書物に書いてあったのが、すべての歌(おべっか)に飽き飽きしていた「カヌート王」についてのことであった。自分の置かれた立場にうんざりしていた王を、周りの者たちは「彼を讃えよ」とおべっかを使う。それに対し王は「おべっか使いなどの言うことは聞かぬ」と突っぱねる。そして自らの王としての力を試すかのように、浜辺の王座で海の水に向って魔法の言葉を使い、足下から去らせようとする。しかしそれは失敗に終わる。

北海からは怒りと嘲笑が続く。上げ潮に沈み行く王座の周りで波たちまでも、「彼に王位を」と、王の嫌いな歌を歌う。

カヌート王は、王としての非難を受ける立場からも逃れ切れず、自らの魔法をも失敗に終わる。家来の失笑がなければ威厳を平和(威厳)を保てると思っていたが、最後には家来たちの嘲笑を受け、その辱めに顔を赤らめてしまうのだ。

最後の連は再び、書物の世界から今に戻ってくる。顔を真っ赤にしている小男。それこそ書物の中のカヌーと王。彼の話が、彼自身もう死んでいると言えるようなものであるということは、彼はその書物の中においてもすでに幽霊なのではないか。そしてかつて王座を置いたこの浜辺を今でもさまよっているのではないだろうか。

というふうに全体を解釈すると、単なる不遇な境遇と不思議な行動を取った王の物語というだけではなく、「Nersary Crimes」に通じる不思議で不気味なジェネシス的世界が広がるように思うのだが、いかがであろうか。

尚、解釈にははぐパン氏より貴重なアドバイスをいただいた。ここに感謝いたします。

3 件のコメント:

  1. 私の唐突なメールに丁寧に応えて直していただき、ありがとうございます。
    解説の部分は私には思いつかないような文章で、いち音楽ファンとして堪能させていただきました。

    少し書ききれなかったことを追加させていただきます。

    A shadow forms cast by a cloud,
    Skimming by as eyes of the past, but the rising tide
    Absorbs them effortlessly claiming.

    eyes of the past というのは、単に『過去のまなざし』でよいかと思うのですがいかがでしょう。
    past に老練という意味はたぶんないと思いますし、少々ひねりすぎかな? と感じました。

    雲が影を投じる、書物を過去に読んだ目のように、それがページの上を通り過ぎていく、
    だから 『上をなでていく・斜め読みする』 のは雲の影です。それがわかるといいかな、と。
    だけど波は『それはもう過去のものだよ』とでもいいたげに(たぶんそれが claiming)、苦もなくページをのみこんでしまう。

    ちなみに
    For from the north ではなく、
    Far from the north 『遠く北方から』です。

    以上、細かいことですが、ご考慮いただけるとうれしく思います。

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  2. 解説を読ませて頂き、これまでモヤモヤしていたものがスッキリ晴れました。ありがとうございます。学生時代にGenesisiに出会い、以来40年間、歌詞の意味もよくわからず自称Genesisマニアを称していた自分が恥ずかしいです。

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  3. コメントありがとうございました。
    そうおっしゃっていただけると、頑張った甲斐があったなぁと思います。
    まだまだ拙いですが、よろしくお願いします。

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