原題:Hymn
■「Gone to Earth」
(ゴーン・トゥ・アース)収録
谷は深く山々は高くそびえ立つ
もし君が神を見たいのなら反対側に移らなければならない
そこで君は頭を雲の中に突っ込むように立ち上がる
飛ぼうとしちゃダメだ、それじゃ降りられないことはわかってるだろ
飛ぼうとしちゃダメだ、ああ神よ、君は降りてはこられない
イエスは天から大地へと降り立った。
人々は言った、これが処女懐胎だと
彼は主の偉大なる話をした
そして彼は自分がわれわれ全ての救済者だと言った
彼は主の偉大なる話をした
そして彼は自分がわれわれ全ての救済者だと言った
それゆえに、彼ら/我らは彼を殺し、高い場所に釘付けにした
彼はまるで我らに理由を尋ねるかのように甦った
そして空高く昇天して行ったのだ
まるで神とともある時のみ君は舞い上がり
まるで神とともにある時のみ我らは飛ぶかのように
谷は深く山々は高くそびえ立つ
もし君が神を見たいのなら反対側に移らなければならない
そこで君は頭を雲の中に突っ込むように立ち上がる
飛ぼうとしちゃダメだ、それじゃ降りられないことはわかってるだろ
飛ぼうとしちゃダメだ、神よ、君は降りてはこられない
Valley's deep and the mountain's so high
If you want to see God you've got to move on the other side
You stand up there with your head in the clouds
Don't try to fly you know you might not come down
Don't try to fly, dear God, you might not come down
Jesus came down from Heaven to earth
The people said it was a virgin birth
Jesus came down from Heaven to earth
The people said it was a virgin birth
He told great stories of the Lord
And said he was the saviour of us all
He told great stories of the Lord
And said he was the saviour of us all
For this they/we killed him, nailed him up high
He rose again as if to ask us why
Then he ascended into the sky
As if to say in God alone you soar
As if to say in God alone we fly.
Valley's deep and the mountain's so high
If you want to see God you've got to move on the other side
You stand up there with your head in the clouds
Don't try to fly you know you might not come down
Don't try to fly, dear God, you might not come down
【解説】
「Gone To Earth」はバークレイ・ジェイムズ・ハーヴェスト(Barclay James Harvest)が1977年に発表した、第10作目の作品である。「hymn」とは「聖歌、賛美歌」のこと。バークレイ・ジェイムズ・ハーヴェストなりの、オリジナル賛美歌という感じだろうか。
フォークタッチ、あるいはブルース風にアレンジした美しく素朴なメロディーが、オーケストラやメロトロンによってスケールの大きい、叙情的な楽曲として奏でられるというのが、バークレイ・ジェイムズ・ハーヴェストの特徴。初期には、後にThe Enidを結成するロバード・ジョン・ゴドフリィがオーケストラの指揮とアレンジをしていたことでも、オーケストラの役割の高さがうかがい知れる。
この、曲自体がオーケストラの使用を前提としたクラシカルで壮大な楽曲ではないというところが大事なところ。基本はメロディーの美しい歌モノなのだ。その叙情性やドラマチックさを高めるために、非常に巧みにオーケストラを使っているのである。
この「Hymn」もアコースティックギターによるフォークソング風な始まりから、次第にキーボードやオーケストラが厚みを付けていくが、バークレイ・ジェイムズ・ハーヴェストの基本である、美しく憶え易いメロディーを持つ特徴が活かされている。事実、シングルカッとされてヨーロッパでヒットしたと言われる名曲だ。
「話者」は「君(you)」に語りかける。「神を見たいなら反対側へ行かねばならない」と。「the other side」とあるので、沢山あるうちの一つではない。「こちら側」と「その反対側」の二つだ。今いる方にいたら、いくら高みを目指しても神を見ることはできないのだ。
では「反対側」とは何か。これは信仰の問題がからんでいるのではないかと思う。今の、興味本意で神を見たいと思っているのならダメなんだ。それとは正反対の、神の存在を信じる場所に自らを置かなければ、高くそびえたつ山の上にたどり着き、雲から頭を突き出すところまで上り詰めることはできない。
そしてそこで「神」を見たとしても、そこから「飛んではダメ」なのだ。「dear God(ああ神よ)」は、一種の感嘆詞で、「神(God)」に向って「降りられない」と言っている訳ではないだろう。あくまで「君(you)」のことを言っているのだ。
神を「see(見る)」レベルの信仰では、飛ぶことも、「降りる(come down)」こともできない。
そしてキリストの話が披露される。「イエス(Jesus)」がこの世に「処女懐胎(virgin birth)」と呼ばれるかたちで降り立った(came down)人物だ。そして偉大なる「神(Lord)」の話を伝えて歩いた。彼は自らを全人類の救済者だと言った。GodとLoadは「神」と「主」と訳し分けられる場合もあるようだが、ここでも厳密な区別はつけていないように思う。
キリスト教に関しては語れるだけの知識を持っていないので深入りは避けるが、少なくともこの歌詞ではキリストは「主の伝道者」であり「人類の救済者」であるとされている。
一応確認しておくと、
・ヨゼフとマリアの間に処女受胎(virgin birth)というかたちで生を受ける。
・宣教活動を行う。
・自らを「神の子」などと呼んだ罪などにより、磷付に処せられる。
・3日後に復活(resurrection)する。これをお祝いするのがEaster。
・再びキリストが昇天する(ascention)。
そこで再びこの曲の歌詞を見てみると、「伝道者」にして「救済者」であるキリストは「高い場所で釘付けにされた」というのは磷付にあったことを指しているだろう。「甦った」のは「resurrection」、「昇天していった」のは「ascention」と、キリスト教の教えの流れに沿った話になっている。
その「ascention」の時に、「話者」は言う。キリストはまるで、自分と同じように「神の中にいる(in God)」時だけ、「soar(舞い上がる)」も「fly(飛ぶ)」こともできるのだと言っているかのようだと。
そこで最初の「you」の話へと戻る。「神」を見ることはできるのだ。しかし舞い上がったり、飛んだり、降り立ったり(come down)することは、「神の中(in God)」にいなければできないのだ。
そこまでの信仰心を持たないと、思い切った行動がきちんとした結果に結びつくことはないのだと、比喩的に言っているのではないだろうか。とすると、この曲は題名通りの、かなり宗教色の濃い曲だと言うことになる。
ただ例えばIONAのように基本的にキリスト教色が強いというバンドではないので、やはりヨーロッパにおけるキリスト教文化の浸透度というか存在感の前では、特別宗教色の強い曲という感じでもないのかもしれない。
プログレッシヴ・ロックの範疇に入れられることが多いバンドだが、テクニックや現実批判や幻想世界を見せる類いのバンドとは一線を画し、非常に美しいメロディーとソフトな歌声を大切にしたロックバンドの、傑作アルバム冒頭の曲。
ちなみにアルバムタイトルの「Gone To Earth」は「隠れて」という意味。美しいジャケットのフクロウは、今森の奥へと隠れようとしているところなのかもしれない。
■「Gone to Earth」
(ゴーン・トゥ・アース)収録
谷は深く山々は高くそびえ立つ
もし君が神を見たいのなら反対側に移らなければならない
そこで君は頭を雲の中に突っ込むように立ち上がる
飛ぼうとしちゃダメだ、それじゃ降りられないことはわかってるだろ
飛ぼうとしちゃダメだ、ああ神よ、君は降りてはこられない
イエスは天から大地へと降り立った。
人々は言った、これが処女懐胎だと
彼は主の偉大なる話をした
そして彼は自分がわれわれ全ての救済者だと言った
彼は主の偉大なる話をした
そして彼は自分がわれわれ全ての救済者だと言った
それゆえに、彼ら/我らは彼を殺し、高い場所に釘付けにした
彼はまるで我らに理由を尋ねるかのように甦った
そして空高く昇天して行ったのだ
まるで神とともある時のみ君は舞い上がり
まるで神とともにある時のみ我らは飛ぶかのように
谷は深く山々は高くそびえ立つ
もし君が神を見たいのなら反対側に移らなければならない
そこで君は頭を雲の中に突っ込むように立ち上がる
飛ぼうとしちゃダメだ、それじゃ降りられないことはわかってるだろ
飛ぼうとしちゃダメだ、神よ、君は降りてはこられない
Valley's deep and the mountain's so high
If you want to see God you've got to move on the other side
You stand up there with your head in the clouds
Don't try to fly you know you might not come down
Don't try to fly, dear God, you might not come down
Jesus came down from Heaven to earth
The people said it was a virgin birth
Jesus came down from Heaven to earth
The people said it was a virgin birth
He told great stories of the Lord
And said he was the saviour of us all
He told great stories of the Lord
And said he was the saviour of us all
For this they/we killed him, nailed him up high
He rose again as if to ask us why
Then he ascended into the sky
As if to say in God alone you soar
As if to say in God alone we fly.
Valley's deep and the mountain's so high
If you want to see God you've got to move on the other side
You stand up there with your head in the clouds
Don't try to fly you know you might not come down
Don't try to fly, dear God, you might not come down
【解説】
「Gone To Earth」はバークレイ・ジェイムズ・ハーヴェスト(Barclay James Harvest)が1977年に発表した、第10作目の作品である。「hymn」とは「聖歌、賛美歌」のこと。バークレイ・ジェイムズ・ハーヴェストなりの、オリジナル賛美歌という感じだろうか。
フォークタッチ、あるいはブルース風にアレンジした美しく素朴なメロディーが、オーケストラやメロトロンによってスケールの大きい、叙情的な楽曲として奏でられるというのが、バークレイ・ジェイムズ・ハーヴェストの特徴。初期には、後にThe Enidを結成するロバード・ジョン・ゴドフリィがオーケストラの指揮とアレンジをしていたことでも、オーケストラの役割の高さがうかがい知れる。
この、曲自体がオーケストラの使用を前提としたクラシカルで壮大な楽曲ではないというところが大事なところ。基本はメロディーの美しい歌モノなのだ。その叙情性やドラマチックさを高めるために、非常に巧みにオーケストラを使っているのである。
この「Hymn」もアコースティックギターによるフォークソング風な始まりから、次第にキーボードやオーケストラが厚みを付けていくが、バークレイ・ジェイムズ・ハーヴェストの基本である、美しく憶え易いメロディーを持つ特徴が活かされている。事実、シングルカッとされてヨーロッパでヒットしたと言われる名曲だ。
「話者」は「君(you)」に語りかける。「神を見たいなら反対側へ行かねばならない」と。「the other side」とあるので、沢山あるうちの一つではない。「こちら側」と「その反対側」の二つだ。今いる方にいたら、いくら高みを目指しても神を見ることはできないのだ。
では「反対側」とは何か。これは信仰の問題がからんでいるのではないかと思う。今の、興味本意で神を見たいと思っているのならダメなんだ。それとは正反対の、神の存在を信じる場所に自らを置かなければ、高くそびえたつ山の上にたどり着き、雲から頭を突き出すところまで上り詰めることはできない。
そしてそこで「神」を見たとしても、そこから「飛んではダメ」なのだ。「dear God(ああ神よ)」は、一種の感嘆詞で、「神(God)」に向って「降りられない」と言っている訳ではないだろう。あくまで「君(you)」のことを言っているのだ。
神を「see(見る)」レベルの信仰では、飛ぶことも、「降りる(come down)」こともできない。
そしてキリストの話が披露される。「イエス(Jesus)」がこの世に「処女懐胎(virgin birth)」と呼ばれるかたちで降り立った(came down)人物だ。そして偉大なる「神(Lord)」の話を伝えて歩いた。彼は自らを全人類の救済者だと言った。GodとLoadは「神」と「主」と訳し分けられる場合もあるようだが、ここでも厳密な区別はつけていないように思う。
キリスト教に関しては語れるだけの知識を持っていないので深入りは避けるが、少なくともこの歌詞ではキリストは「主の伝道者」であり「人類の救済者」であるとされている。
一応確認しておくと、
・ヨゼフとマリアの間に処女受胎(virgin birth)というかたちで生を受ける。
・宣教活動を行う。
・自らを「神の子」などと呼んだ罪などにより、磷付に処せられる。
・3日後に復活(resurrection)する。これをお祝いするのがEaster。
・再びキリストが昇天する(ascention)。
そこで再びこの曲の歌詞を見てみると、「伝道者」にして「救済者」であるキリストは「高い場所で釘付けにされた」というのは磷付にあったことを指しているだろう。「甦った」のは「resurrection」、「昇天していった」のは「ascention」と、キリスト教の教えの流れに沿った話になっている。
その「ascention」の時に、「話者」は言う。キリストはまるで、自分と同じように「神の中にいる(in God)」時だけ、「soar(舞い上がる)」も「fly(飛ぶ)」こともできるのだと言っているかのようだと。
そこで最初の「you」の話へと戻る。「神」を見ることはできるのだ。しかし舞い上がったり、飛んだり、降り立ったり(come down)することは、「神の中(in God)」にいなければできないのだ。
そこまでの信仰心を持たないと、思い切った行動がきちんとした結果に結びつくことはないのだと、比喩的に言っているのではないだろうか。とすると、この曲は題名通りの、かなり宗教色の濃い曲だと言うことになる。
ただ例えばIONAのように基本的にキリスト教色が強いというバンドではないので、やはりヨーロッパにおけるキリスト教文化の浸透度というか存在感の前では、特別宗教色の強い曲という感じでもないのかもしれない。
プログレッシヴ・ロックの範疇に入れられることが多いバンドだが、テクニックや現実批判や幻想世界を見せる類いのバンドとは一線を画し、非常に美しいメロディーとソフトな歌声を大切にしたロックバンドの、傑作アルバム冒頭の曲。
ちなみにアルバムタイトルの「Gone To Earth」は「隠れて」という意味。美しいジャケットのフクロウは、今森の奥へと隠れようとしているところなのかもしれない。
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