2009年6月12日金曜日

「天の支配」ピンク・フロイド

原題:Astronomy Domine / Pink Floyd

The Piper At The Gates Of Dawn
 (夜明けの口笛吹き)収録






ライム色と透明な緑色、二つ目の場面
君がすでに知っている青色との戦い
ふわふわと下降し、戦いの音は
地下の、氷のように冷たい水のあたりで反響する
木星、土星、オベロン、ミランダ、
ティタニア、海王星、タイタン
星々も脅えることがある...

眩い星座達がはためく、キラキラ、キラキラ、キラキラ
バーン、ドカーン、ドカーン
天国への階段はダン・デアをも脅えさせた、そこに誰がいるんだろうと…

ライム色と透明な緑色
音は地下の氷のように冷たい水のあたりで反響する
ライム色と透明な緑色
音は氷のように冷たい水のあたりで反響する
地面の下で


Lime and limpid green, a second scene
A fight between the blue you once knew
Floating down, the sound resounds
Around the icy waters underground
Jupiter and Saturn Oberon Miranda
And Titania Neptune Titan
Stars can frighten...

Blinding signs flap flicker flicker flicker
Blam Pow pow
Stairway scare Dan Dare who's there...

Lime and limpid green
The sounds surrounds the icy waters underground
Lime and limpid green
The sounds surrounds the icy waters
Underground


【解説】
1967年に発表されたPink Floydのファースト・アルバムから、UK盤での最初の1曲である。ちなみにUS盤の最初の曲は「See Emily Play」で、すでにシングルで発売されていた「See Emily Play」は英国盤からは外されている。

シド・バレット(Syd Barret)がリーダーとして、ほとんどの曲を書き、歌い、ギターを弾いて作り上げた、唯一のフルアルバムであり、後のPink Floydとは雰囲気が異なる。しかしこのサイケデリック感や、スペイシーな空間的な広がりはすでに感じられる。ボーカルはギターのシド・バレットとキーボードのリック・ライト。

「天の支配(Astronomy Domine)」は、ドラッグで「シドがトリップした時に見た、惑星間の天空に浮かぶ自分自身をイメージしたも」(「夜明けの口笛吹き[40周年記念版]」ライナーノトより)だと言う。ちなみにタイトルの「Astronomy Domine」は当初「Astronomi Domini – an astral chant」と呼ばれていた(サイト「Astronomy Dominé」より)。「domine」はラテン語で「Load(主、神)」を意味する言葉。すると「神の天文学 - 天界の聖歌」というような意味か。

LSD体験に基づくとなると、明確な意味よりもイメージの連鎖と考えられるが、その連鎖を追いかけてみると、まず第一の場面に青い光に満たされた世界が現れていたらしい。そこに第二の場面として、その青色に戦いを挑むように緑系の色(ライム色と透明な緑色が広がってくる。青も緑も宇宙空間、あるいは天界の色だろうか。その戦いは音を伴っている。音は冷たい地下水が流れる地中で反響するかのように響く。

天空の星々はキラキラと輝きを増し、やがてあちこちで爆発が起こる。「Stairway」は「Stairway to Heaven」と解釈し、天に至る階段を上る、我らがヒーロー(シド・バレットが子どもの時によく読んでいたという)Dan Dareをも脅えさせる、そこには誰かがいるのかと。
ライム色と透明な緑色が青色との戦いに勝ち残る。音は冷たく響き続けている。


オベロンは天王星の第4衛星、ミランダは天王星の第5衛星、ティタニアは天王星の第3衛星、土星の第6衛星の名前だ。第2連の「signs」は「a sign of the zodiac(星座)」と解釈した。

Don Dareは1950年代にイギリスのFrank Hampsonによって創作された「Don Dare, Pilot of the Future(未来の飛行士、ドン・デア)」というSFコミックのヒーロー(右図はWikipediaより)。

宇宙空間での音と光の爆発、コミックヒーローまで登場する超自然トリップ体験。エコーの効いたギター、荒々しいドラム、イコライズされた声、終始流れるオルガン、淡々と歌うボーカル、どれもがコズミックでサイケデリックなサウンドを作り上げている。ラストのボーカルハーモニーが特に美しい。名曲。

なおジャケットは「40周年記念盤」でモノラル・ヴァージョンとステレオ・ヴァージョンの2枚組のもの。ちなみにシドが最終的にミックスを手がけて完成させたのはモノラル盤の方だという。

ちなみに同じ年に、ビートルズの傑作アルバム「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が発表されている。

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